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魚を食べる人間はどうしたらいいのでしょうか?

ラングドン・クック  /  2019年9月2日  /  読み終えるまで8分  /  食品

産卵床をめがけて上流へと邁進する野生のチヌーク・サーモンのメス。ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー。Photo: Eiko Jones

ケビン・デイビスがルイジアナ州南東部で過ごした子供時代、リサイクルとはピックアップトラックにゴミを積み込み、川へ行って捨てることを意味しました。それでも、彼と隣人たちは野生に対する畏敬の念を抱いていました。「僕らには狩猟採集民としての誇りがあった」と彼は言います。彼はアカウオ、ニベ、フエダイ、ザリガニなど、捕獲した魚でいっぱいのクーラーを持ち帰り、隣近所と分かち合いました。その後、著名なシェフのポール・プルドームが彼のヒットレシピであるブラックンンド・レッドフィッシュを紹介します。そしてデイビスが思い起こすのは、バイユーの外ではほとんど知られていなかったこのカラフルなニベ科の魚が「ほぼ絶滅しかけた」ことです。

その何年もあと、新世紀のはじまりのころ、デイビス自身がシェフとなり、シアトルのレストランの多くの顧客のために魚を調理していたとき、若いキッチンスタッフがメカジキ産業の暴露記事を彼に見せました。「これがあなたの世代がやっていることです」スタッフは怒りながら、そう言いました。デイビスは改善を誓いました。自分のレストランをオープンしたとき、太平洋北西部の最も象徴的な衰退するゲームフィッシュにちなんだ名を付けました。「スチールヘッド・ダイナー」では、壁に飾られたスペイフライは見られますが、メニューにはスチールヘッドはありません。養殖サーモンや、南米やインドネシアからの魚も。シェフ兼オーナーは言います。「西海岸からの魚だけを調達する」と。「オレゴンからアラスカまで。そして健全な種だけを買っている」

「我々の惑星は僕らが何十年ものあいだ抱いてきた海との耽溺的な関係を持続させることはもうできない」—カッソン・トレナー

今日食魚性であること――魚を常食とすること――は解決困難な状況です。野生で捕獲された魚は、ほとんどの人が食べている工業的畜産業で育てられた食肉の健康や自然の代替となる一方で、乱獲、生息地の破壊、そしてその他すべての近代文明の副産物により、私たちは海の資源を恐るべきスピードで食いつぶしています。モントレーベイ水族館などの組織はシーフード・ウォッチのようなスマホ用の便利なアプリを提供し、消費者が情報に基づいた購買決定を下す手助けをしていますが、こうした一般化されたいかさま情報は、全国の様々な地域で必要とされる詳細や地元知識とは程遠いところにあるのが現実です。では魚を食べる人間はどうしたらいいのでしょうか?

魚を食べる人間はどうしたらいいのでしょうか?

ワナッチー川で自生のスチールヘッドをキャッチ&リリースするシェフのケビン・デイビス。この魚がシアトルの彼のレストラン「スチールヘッド・ダイナー」のメニューに登場することはない。Photo: Kevin Davis Collection

シェフ・デイビスにとって、持続可能な魚の購買方法は何年もかけて学んだものであり、いまや彼の日常の業務となっています。しかし平均的な消費者にとっては、魚市場へ行くのはまさしく気が狂いそうになる経験です。メキシコからのエビを買うべきなのでしょうか? ピュージェット湾の飢えたオルカの好物である野生のチヌーク・サーモンは? そして、テラピアとはいったい何なのでしょう?

デイビスの消費者への助言は、「良い魚には大枚を払う用意をしておくこと」です。とくにレストランでは。「高価でなければ本物じゃない」と彼は言います。そしてつねに国内の、確認のできる供給元から買うことです。「地元の商業漁業者を支援し、疑問を投げかけること」

しかし魚業者全員が疑問を歓迎するわけではありません。ジョニー・フィッシュモンガーがアラスカ州キングサーモンにあるフィッシュ・ビジネス・カンパニーを経営していないとき、彼は海産物の詐欺と虚偽表示を暴くため、多くの質問をしています。海産物のラベル付けの正確さは根強い問題です。昨年ニューヨーク州の法務長官が、ラベル詐欺は「蔓延」し、ニューヨーク市の43%もの魚が虚偽表示されている、と言いました。そこで私はオレゴン州ポートランドのジョニーと旧交を温めることにしました。彼はラベルをチェックし、養殖サーモンを買わないように説得してまわっているのです。

“A tilapia could be anything.”
「小売業者と卸売業者はほとんど信頼できない」とジョニーは言います。まさしくその日、彼は責任ある購買を目指す人たちに、人気の高級スーパーマーケットが養殖サーモンを野生のものとして売ろうとしていたことを暴いたばかりでした。「カウンターで売っているヤツはまったく知識がなかった。よくあることさ」と言います。彼によれば、サンフランシスコ・ベイエリアとロサンゼルスの状況はさらに酷く、そして遠隔地域では「それは忘れろ」とのこと。詐欺はサーモンのみならず、全種にわたるそうです。「何でもがテラピアで通っているんだ」

ジョニーは小さなコミュニティ・サポーテッド・フィッシャリー(コミュニティ支援による漁場(CSF))から購買することを推薦しています。彼の要となるアドバイスは「自分自身の商業漁業者を知る」ことです。

持続可能な方法で捕獲されたピンクとソッカイ・サーモンを扱うパタゴニア プロビジョンズのマネージング・ディレクターのバージット・キャメロンは、その助言を真剣に受け止めました。同社はワシントン州のリーフネット漁業を営み、古代の先住民族が使った漁業方式により、混獲なく高品質の魚を生産するルミ・アイランド・ワイルドから調達しています。リーフネットは実際、ピュージェット湾のチヌークなどの絶滅危惧種が無事リリースされる選別捕獲を可能とする、公海における唯一の漁業法です。「海産物が野生のものかどうか、あるいは水域に危害を与えるものであるかどうか、購買者が知るのは困難であることを理解しています」とキャメロンは言います。「私たちの調達にあたり、パタゴニアは著名な科学者と魚類保護団体と協力し、非常に厳格な『プロビジョンズ・ワイルド・シーフード調達基準』を作りました。このためには本当に疑問を投げかけるしかありません。つまり、それがどこから来たもので、どのように収穫されたものか。そしてそこにある問題は何なのか」

魚を食べる人間はどうしたらいいのでしょうか?

ルミ島のリーフネット漁業によるピンク・サーモン。リーフネットは元祖、そしていまも、最善の選別漁業法だ。Photo: Amy Kumler

ルミ・アイランド・ワルドのようなコミュニティ支援による漁業は市場でその存在を高めていますが、農業と同じように、海産物産業はカッソン・トレナーといった人たちが生涯キャリアをかけて抑制しようとしている巨大企業によって独占されています。トレナーの漁業活動家としての履歴は長く、〈グリーンピース〉の持続可能な海産物の専門家、米国初の持続可能な寿司バーであるサンフランシスコの「タタキ」の共同創始者、そして最近では海洋保護の次世代に情報を与えることを目的とした子供用の本『ウミジュー』の著者などがあります。トレマーは率直にこう言います。「我々の惑星は僕らが何十年ものあいだ抱いてきた海との耽溺的な関係を持続させることはもうできない」と。そして、私たちは食物連鎖の上にいる捕食魚ではなく、下辺の魚に焦点を当てるべきだと言います。また地引網や、汚染と疾病を広める囲い網養殖などの破壊的な慣行を避ける必要もあります。「何より、単純に魚を食べる頻度を減らすことだ。つまりそういうこと」

何を食するかという決断は容易ではありません。「スチールヘッド・ダイナー」のシェフ・ケビン・デイビスは、21世紀に地元の持続可能な魚を顧客に食べさせることを試みるストレスを嫌というほど知り、「僕はガラスの家に住んでいる」ことを認めます。「すぐ外では水は不毛であり、河川は閉ざされている。そして僕はサーモンを売っているんだ。『サーモンを本当に救いたいのなら出すのをやめるべきだ』と言う人もいるだろう」と彼は語ります。とりあえずのところ、デイビスは健全な回帰から調達した野生のサーモンを売ることに満足しています。魚を捕まえて食べることは、結局のところ、人間がもつ野生の自然との最後のつながりのひとつです。そしてそのつながりがなければ、いったい何が残されているでしょう?

野生の魚を守る

人間は自然に勝るのでしょうか。魚や川を含めた生態系の健全性を取り戻すことは、自然と、それらからあらゆる恩恵を受ける私たち人間に、一様に利益をもたらします。野生種をすべて失えば、私たち自身を失うことになります。

20191031日、『アーティフィッシャル』フィルム全編を公開しました。

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