湿地帯のガイド
絶滅危惧種をアルゼンチンの湿地帯に戻すことは人間にとってもよいこと
これまで、アルゼンチンのイベラ湿地帯の内外に住む若者は町、ときには遠くコリエンテスまでも、職を求めて地元を去らなければなりませんでした。しかし公園における野生動物の観光ツアーが、それを変えています。「故郷に留まれることを僕はとても誇りに思っています」とガイドのフェデリコ・フェルナンデスは言います。
当初から、目標は生態系全体を復元することでした。その課題は、アルゼンチン、コリエンテス州のイベラ湿地帯においては他のあまりにも多くの地方と同様、数種はすでに絶滅していたことです。完璧に機能する生態系のためには、動物と鳥がふたたび導入される必要がありました。そのため、2012年より野生生物学者、生態学者、〈トンプキンス・コンサベーション〉のパートナーである〈リワイルディング・アルゼンチン〉のボランティアから成る献身的なチームは、失われた動物を導入し、その一部に自活する方法を教育する仕事に着手しました。
共同創始者のクリスティン・トンプキンスは、最近のTedトークで、チームは顕著な成功を収めたと語りました。彼らはオオアリクイ、パンパスジカ、ペッカリー、ハゲガオホウカンチョウ、アルゼンチン産ノガンモドキ、ベニコンゴウインコの復帰を成し遂げました。(2020年6月28日、5羽の若いコンゴウインコが囲いからイベラの野生へと飛び去り、主要なベンチマークを達成しました)オオカワウソの再導入も間近です。しかし次は、さらにより複雑なテストが待ち受けています。それは70年もイベラから姿を消している、その地域のキーストン捕食者であるジャガーの復元です。
同プログラムと最後に確認をとったとき、過去何十年間ではじめてこの地域で生まれた最初のジャガーであるタニアが幼獣を生みました。タニアは素晴らしい母親であることを証明し、その1匹はまもなく(独自に狩をできるかどうか試すため)、さらに広い囲いに今春放たれた幼獣たちに加わります。
ニューメキシコを拠点に活動する写真家ベス・ウォルドが、この潜在的に歴史的な段階を写真に収めました。彼女はまたこの過程において、ある意味見逃されている物語を発見しました。それにより地元民たちは「ヤグアラテ」(「ジャガー」の起源であるグアラニ語)の復元を受け入れ、村民の一部は地元に留まり、湿地帯で昔ながらの暮らしを営む方法を得ました。復元された生態系は、人をも支えるのです。
〈リワイルディング・アルゼンチン〉(スペイン語)と〈トンプキンス・コンサベーション〉をフォローしご支援ください。
全写真:ベス・ウォルド

#Denlife:イベラ国立公園の中心の島のジャガー・リイントロダクション・センターにあるこれら4つの6角形の囲いには、ジャガーが収容されている。このジャガーは70年後はじめてイベラの湿地帯を自由に徘徊する新世代の雄親となることが期待されている。

過去にペットとして飼われていたイシスは、イベラに到着以来、孤独を好んでいる。ジャガーの交配の細部を学ぶことがイベラの再野生化に必要な技能のひとつだ。

人間の住居から救われたイシスはカイマンを食するのを好むようになった。

公園の端にある小さな農場からイベラの湿地帯へとカヌーを押し出すフェデリコ・フェルナンデス。子供時代、彼はイベラの中心にあるカランボラと呼ばれる小さなコミュニティ(パラヘ)に住んでいた。そこで家族は牛、豚、鶏と、乾燥した土地の小区画で野菜を育てた。彼が10歳のとき、彼の家族は職を求め、彼が学校へ行けるようにコンセプシオンの街へと越した。彼は故郷に戻れたことを喜んでいる。

水が深くなると、フェデリコは馬に乗るか、馬と一緒に泳ぐこともある。亜熱帯性気候のため、泳ぐことは馬と人間の両方にとって喜ばしいことだ。

ゴンドラの船頭もつとめる湿地帯ガイド。

イベラのエステロス(湿地帯)を伝統的なカヌーで旅するのを楽しむ旅行者たちを振りかえるフェデリコ。野生動物のイベラへの復帰により、この地方への観光客数はますます高まり、フェデリコのような地元ガイドの職も増えている。

ガイドの1日を終えるフェデリコ。