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何かのために走る

ミーガン・ブラウン  /  2024年2月28日  /  読み終えるまで9分  /  トレイルランニング, カルチャー, クライミング, スポーツ, ハイク, 環境

「フットプリント・ランニング・キャンプ」は、走るだけでなく、気候危機の解決策を見つけるイベントだ。

フットプリント・ランニング・キャンプでは、リーダーが従うこともあれば、従う者がリーダーになることもある。この1週間のプログラムは、物事のやり方を再考するように設計されている。創設者のダコタ・ジョーンズは、自身が行った最も有意義な事業と言う。コロラド州シルバートン。Photo: Max Romey

コロラド州のシルバートンとユーレイの中間あたり、レッドマウンテン峠のはずれに建つ素朴なスキーロッジで、若者グループが夕食の席に着き、地球を救う方法を熟考していた。彼らはフットプリント・ランニング・キャンプの参加者として、ここに集まっている。
気候危機のためにコミュニティが何を解決できるかを考案しようとする、大きな構想を掲げたランナー向けのプロジェクトであり、そのアイデアができるかぎり現実に近付くようにメンターに引き合わせる。携帯の電波もインターネットもない山小屋で、午前中はランニング、午後と夕刻はワークショップで、1週間を共に過ごす。標高3,300mの窓辺で濡れたランニングウェアを乾かしながら、山々が光でその色を変える間、興味深く発展途上のアイデアが解体され、組み直される。

何かのために走る

参加者のペイジ・ペンローズは、メンターや仲間達(そしてメンターのリディア・ジェニングズの愛犬サルチチャ)を前に、発表のリハーサルをする。Photo: Max Romey

今年のメンバーは9人、加えてメンター、講演者、主催者、そしてお行儀のよい数頭の犬だ。キャンプが始まって数日後に到着した私は、寝袋にくるまって書き物をしながら、窓からモクモク煙が立ち上るのを見つめている写真家で画家のマックス・ロミーを見つけた。キャンプ参加者は、リディア・ジェニングズ博士による多様性、社会正義、土地造成についての講話を終えようとしていた。同じ日のその前に、レン・ネツェファー博士が革新と擁護についてグループと議論していた。(フットプリントには博士号を持つ講演者がたくさんいる)壁の向こうから、くぐもった質問の声が聞こえていた。

「ここまでどんな感じ?」マックスに尋ねた。

「今ちょうど、解体して、元に戻しているところ。みんな疲れ切って、限界だよ。」彼は言った。

ちょうどその時、ドアが開いてサルチチャという名前の犬が飛び跳ねながら出てきた。誰かに名札を手渡され、すぐに私は、ニューメキシコ州ロスアラモス出身のエコロジストや、パタゴニアのアンバサダー、ペイトン・トーマス(どちらも博士号保持者)と肩を並べて座ることになった。自然景観と人とのつながりといったことから、天気のように大きく感じられることもある小さなことについて語り合った。誰もがノートブックを持っていて、雰囲気は温かく、躍動的だった。

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写真家で画家のマックス・ロミーは、自身の作品とセントポールロッジの背後にある不穏な空を記録する。コロラド州シルバートン。Photo: Max Romey

フットプリント・ランニング・キャンプは、コロラド州ドゥランゴ近郊で育ったプロランナーのダコタ・ジョーンズが始めたものだ。ジョーンズは、環境科学者、アーティスト、プランナー、ビジネスピープルのそれぞれの専門知識、学生の革新的アイデア、ランナーの忍耐力やコミュニティを一同に集めたいと考えていた。彼は何年も、どうすればランニングと気候変動への取り組みを組み合わせられるかを考え続けていた。ランニング合宿の形式がいいが、同時にランニングを超えて人々に集まってもらえるものにしたいとも思っていた。「我々は気候変動を食い止めたい。でも同時に、人々に力を与えたいし、それらの人々が誰であるかを定義したい」とジョーンズは言う。

参加希望者はプロジェクト案の提出を求められ、そのアイデアに基づいて選考が行われる。キャンプでのすべての活動は、そのプロジェクト案を実行可能なものにすることが目的で、そのためにケーススタディ、ワークショップ、議論、メンターと個人の1対1の関係、あるいは専門分野ごとのメンターグループが組まれる。このアプローチは比較的シンプルである。問題を把握し、解決策を考え、自身のアイデアを人々が参加したくなるような方法で伝達し、そして実行に移す。あるセッションでは、参加者は「スピードデート」形式で互いに自分の案を披露するよう言われた。ただし、何をしたいかを議論するのではなく、なぜそれをしたいかを説明しなければならない。その演習の目的は、所定の問題について、人に自分と同じくらい関心を持ってもらう方法を考え出すことだった。

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毎日のトレイルランはキャンプのスケジュールの重要な要素だ。Photo: Grace Williams

週の前半、岩の鉄分で自然に赤く染まった地表に穿たれた廃坑まで全員でハイクし、プロジェクトの「プレモーテム」(事前検死)を実施した。あらゆる失敗の形やその理由を想像するように言われた。その設定はドラマティックだった―ある種の失敗した大構想。そこには意図があった。ジョーンズがキャンプ地をサンファン山脈にしたかった大きな理由は、砂漠地形に水をふんだんに供給する周辺の山々を傷付けてきた採鉱の歴史があったからだ。人がいる場所にこの種のネガティブな影響を与えられるのなら、おそらく同様に逆のポジティブな影響を及ぼすことも可能なはずだ。

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時には炎に照らされたダンスパーティも大切だ。Photo: Max Romey

週半ばの夕食後、焚火を囲んで、就寝までダンスパーティが開かれた。その夜は後部座席で車中泊か、あるいはロッジ2階で小屋泊である。翌朝、私たちは車でユーレイへ向かい、サンファン山岳協会と一緒に数時間かけて登山道を整備した。歩いてゴミを拾ったり、小枝を切ったりしながら、何人かの参加者にここに来たいと思った動機を少し聞くことができた。走ることが好きなのは別として、どの参加者も、聡明で解決を重視する人と一緒に活動する機会を求めていた。プロジェクト参加者の多くは、特定の関心や直接体験に動かされていた。最年少参加者の1人、リリー・ローレンスは、パンデミック中に刺しゅうを始め、そこから衣類の廃棄について考えるようになった。フットプリントでの彼女のプロジェクトは、アウトドア業界におけるアパレルの氾濫や過剰生産を減らす方法を検証することだった。またメーン州育ちのマイルズ・アンダーソンは、故郷の州の漁業が海洋温暖化に適応できるようにしたいと考えていた。

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週の後半、フットプリントのメンバーは登山道の整備に1日を割く。Photo: Max Romey

7日間のコースを通じて、グループはモンタナ州の牧場、政治的境界を超えた活動、執筆と教育、目前の未来と漠然とした未来などについて話した。誰がメンターで、誰が生徒か、見分けがつかなくなることもしばしばで、私はそれを、このキャンプの設定が生み出した信頼とつながりのしるしと受けとめた。このキャンプの目的は、個人をリーダーとして選び出すことではなく、リーダーシップのスキルを教えること、そして共通の動機へ人々を集めることだ。「あなたの仕事があなた自身であるなら、あなたという存在がなくなるまで、失敗することはありません」その日の午後、ラコタ族のスキーヤーでアクティビストのコナー・ライアンは説いた。その意味では、この部屋の誰もが既にリーダーだった。

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走った後のクールダウン。Photo: Grace Williams

しかし、私がフットプリントで過ごす間に感じた最大の印象は、どのアイデアも、それだけでは気候危機の進路を変えられないということだ。個々のアイデアにそこまでの大きさはない。むしろ、そうしたアイデアが合わさって生まれる全体的影響や、共に考案しようとする集合的な取り組みが、最終的に変化を起こせるのだろう。そこに何か希望が感じられる。

フットプリント2022の参加者と各自のプロジェクト:

  • マイケル・ハラルソン:自身の現在の非営利団体「リニュー・アース・ランニング」を刷新する。この団体の目的は、ランニングのイベントやコミュニティを活用して、奪われた土地を先住民族に返還することだ。
  • ノエル・クラーク:水産研究者としての経歴を生かして、土地管理者、登山道工事業者、開発業者など、土地利用について意思決定を下す人々を対象に、流域の各所にどのようなつながりがあるか、そしてある場所のダメージが近くの見過ごされがちな場所にどのように影響し得るかを啓発する「流域プログラム」を開発する。
  • オースティン・メイヤー:畜産業が人間、土地、動物、気象に及ぼす影響を説明するポップアップシアター・ショーを制作する。
  • マイルズ・アンダーソン:在来種がより水温の低い海域へ移動しているメーン州で、シーフード業界を経済的に刺激する水産養殖プロジェクトを企画する。
  • ステファニー・ヒメネス:社会正義と環境問題の交点に着目したジャーナリズム・プロジェクトを計画する。
  • ゾーイ・プリッチャード:気候変動について地域密着型のプロジェクト・ベースの授業を行うことで、無関心を克服し、行動を鼓舞する、高校生向けのカリキュラムを開発する。
  • リリー・ローレンス:自身の洋服修繕ビジネスを通じて、アウトドア業界のスローファッション意識を高める。
  • ルーク・フォーレイ:アウトドア教育者がK-12(6~18歳の米国義務教育)の生徒に体験学習型の授業を行う気候変動カリキュラムを開発する。
  • ペイジ・ペンローズ:スポーツのダイバーシティを高め、不利な状況にある人々にインクルージョンとチャンスを提供する方策として、パラアスリートにトレイルランニングの機会を拡大する。
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ロミーは近くにいる友達の足跡を記録する。Photo: Max Romey

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