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土の上の反抗者たち

ジョニー・ゴール  /  2020年8月4日  /  読み終えるまで12分  /  コミュニティ

タマネギには泣かされるだけ、というのが誤解であることを証明する〈ロデール・インスティチュート〉のインターン、アヴァ・ソネット、デライラ・ミスケとトゥイ・トング。photo:Johnie Gall

アヴァ・ソネットにはわかっています。自分が農業従事者であることを知ったとき、人はどのようなイメージを抱くかを。「女性の農業従事者は、全員青白くて毛深いと思っていたでしょう」と、ロイヤル・パープル・オニオンの袋に腕を埋めた彼女がクスクス笑いながら言うと、その脇で働く2人の女性も抑えきれずに笑いだします。

実際には、彼女たちは誰一人として毛深くも、青白くもありません。作業服とゴム手袋を着て、髪をきれいに編み、防御マスクとバンダナで顔を覆った女性たちは、ロージー・ザ・リベッターを文化的なアイコンにしたような、一種の不屈の精神をもっているように見受けられます。しかし彼女たちは何年もの経験によって鍛えられた熟練者ではなく、新しい世代の農業従事者であり、世界的な健康危機のなかで農業を営むことは何を意味するかを学んでいる新米です。

「農業従事者であることはいま、これまで以上に重要です。とくに次世代の農業を担うこと、未来のためにどうやって持続可能な方法で行うかを知ることは大切です」とインターン仲間のデライラ・ミスケは、明るいピンクのポストイットでラベルづけされた収穫物の箱を抱えながら、黄色のバンダナを通して語ります。「オーガニック農法の健康と人びとの健康は密接に関連しています。仕事は重要だと感じています。私自身が重要だとも」

土の上の反抗者たち

ドライブスルーで植物を販売する際、お客様の安全に保つための手順にしたがう〈ロデール〉のインターン、デライラ・ミスケ。photo:Johnie Gall

私たちが農家を軽視してしまったら、私たちはその贅沢さを失ってしまいます。新型コロナウィルスのパンデミックがアメリカを襲って以来、スーパーマーケットの空になった棚と自宅待機命令は、消費者に食糧の安保と自立の問題に立ち向かうことを余儀なくさせてきました。突如として、皆が買い占めをしているようで、小麦粉から鶏肉、CSA(地域支援型農業)の分け前まで、多くのものの不足へとつながりました。大勢の人びとが、一部の人ははじめて、食物がどこからやって来るのかを問いかけています。

大規模工業農業は増えつづける世界人口を食べさせるための解決策だ、としばしばうたわれています。ですが実際には、世界の食品のほとんどであるおよそ70%が25エーカー以下の小規模農家や家族経営農家に起因すると、国連は報告しています。だからアメリカが大恐慌以来最高の失業率に近づき、この国の労働人口の多くがリモートワークを要求される、あるいは一時解雇されるなか、農家や農業労働者たちは「エッセンシャルワーカー(必須労働者)」と呼ばれているのです。

「私たちは他のものは何も制御できなくても、食を通して変革を起こすことができます。なぜなら誰もが食べる必要があるからです」と、アヴァは手にいっぱいのタマネギをジャグリングしながら自信たっぷりに語ります。「パンデミックは農業に対する私の情熱を完全に強固なものにしてくれました。それは必須なのです」

19歳のアヴァは〈ロデール・インスティチュート〉で住み込みで働く7人のフルタイムのインターンの1人で、その最年長者は30歳。ペンシルベニア州の南東の角にある寄せ集めの耕地にある非営利のインスティチュートは、今日の最先端のリジェネラティブ・オーガニック農業の科学を成す拠点で、研究者たちはオーガニック土壌の健康から野菜の栄養密度まですべてにおいて、長期にわたる試験を実施しています。しかしここはまた認証オーガニック農園としても機能し、実験室、教室、放牧養豚施設、リンゴ園、温室と農地から成る333エーカーを有します。インターンたちは「世帯」としてこの構内で7か月間住み込みで働き、季節ごとの栽培、植え付け、収穫の経験を積みます。彼らはまた、食のアクセスプログラムの運営、近郊都市の「食品砂漠」やファーマーズマーケット、さらにはオーガニック食品のモービルマーケットでの75人のCSA(地域支援型農業)プログラムの運営も支援しています。

「教育に対する私の情熱を煽るもののひとつは、引退していく農業従事者と新しい志望者のあいだの大きなギャップです」と言うのは〈ロデール〉のアシスタント・ファーム・マネージャーのダン・ケンパー。彼はまたオーガニック・ファーマー・トレーニング・プログラムの教育長の役も務めます。「私たちが卒業させているのは、たんに良い労働者ではなく、農業従事者です。いまこれまで以上に、若者がこのような経歴に入るのを、私たちが尻込みしないことが重要です」

土の上の反抗者たち

いま散髪してもらえるのは植物だけかもしれない。ときとして葉の成長を促進するための「散髪」が必要となる200種類以上の認証オーガニック植物の準備をする〈ロデール〉のインターンたち。photo:Johnie Gall

2012年にローンチしたオーガニック・ファーマー・トレーニング・プログラムは、農家の近辺に住んだり、家業としてすでに農業に参入した人びとのみならず、新しい農業従事者を勧誘することに焦点を当てています。1月に高校を卒業したばかりのアヴァは、実際グーグル検索でオーガニック農法を見つけました。インターンの一部はすでに1〜2シーズンの経験を積んでいますが、その他の農業経験は1〜2か月にすぎません。〈ロデール〉のオフィスのスタッフと研究者は自宅勤務を命じられましたが、インターンは現在農地に住んでいるため、いまも敷地内で作物を植え、動物に餌をやり、すべての運営をつづけることが許されています。

「駐車場は普段は満杯ですが、いまは空っぽです」と言うのは〈ロデール〉でインターンシップをするためにバージニアから引っ越してきたブリー・ハーシ。「私たちと温室管理人だけです。科学者がいないので、研究を手伝うことはできません。モービル・ファーマーズ・マーケットもなければ、会社のトラックを運転することもできないので、孤独感があります。でも私たちは物事の異なるやり方を考え出しています」

最近の農のニュースの多くは悲惨です。学校、レストラン、リゾートからの注文が枯渇するなか、食料品店や直営店は前代未聞の需要の増加を必死に満たしながらも、大規模農家は何千ポンドもの生鮮食品を寄付、あるいは破棄することを余儀なくされています。農家が新鮮な牛乳を肥料溜めに捨てている話を耳にします。フロリダではキャベツ畑が収穫されぬまま耕うんされています。広々とした空間と人口過密の都市からの距離によってこれまで隔離されてきた遠隔地の農業地域は、毎日新たな感染を記録しています。移民労働者と農業労働者の一部は石鹸と水への散発的な利用を報告していて、その多くがCOVID-19の感染を防止するための保護や適切なトレーニングを母国語で受けていません。そのうえ米国労働省は、作物労働者のうち健康保険のある者は半数以下であることを発見しました。

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ペンシルベニア州の〈ロデール・インスティチュート〉の本校ではチームワークがミソ。photo:Johnie Gall

誰もが食べる必要があるため、農家は他の経済セクターに比べて景気後退に対して、歴史的にうまく対応してきました。しかし、コロラド州立大学とミズーリ大学の研究者の最近の分析によれば、地元地域や地方自治体の食システムにおける新型コロナウィルスの大流行についての経済コストの合計は、今年の3月から5月の間だけで13億ドルに達する可能性があります。それから農家のための景気刺激基金95億ドルはどうなったのでしょうか。家畜生産者と特殊作物生産者、そしてファーマーズマーケット・セラーのあいだでそれをどう分配するかは農務省次第です。

このパンデミックの中で消費者がお気に入りのレストランとバーを救うために必死になるなか、ほとんどの人が欠いている認識が、おそらく小規模ビジネスのもう一つの重要な部門である農家が実際に長いあいだ危機を経験しているということです。2019年、アメリカの農家の倒産は過去8年間で最大でした。その多くが商品の長期にわたる低価格、ますます増大する農家の借金、動物の疾病、統合化などの工業農業の失敗に起因し、さらに気候変動が中西部には記録的な洪水、西部には山火事を含む劇的な影響を土地と水にもたらしています。

しかし〈ロデール〉のインターンにとって、これらの課題はこれまでのところ彼らの決意をただ深めているだけです。

「私は地球と環境学からはじめたのですが、岩と泥に目を向けることに落ち着きました」とニュージャージー州モンクレア出身のトゥイ・トングは笑います。メガネと鼻輪をつけ、フランネルのシャツに身を包んだ彼女は、服装を見るかぎり「学者の農家でパンク」のようです。「硬い科学を永久に勉強するのは嫌で、持続可能科学分野に入りました。でもそれは完全にビジネス・ベースで、とても企業的であることに気づき、私は多くの反感を抱きながらその学位を取得しました。だから私は『変化したい若い女性にできる最も急進的なことは何か』を考えた末、農業従事者になったのです」

この公共健康危機と私たちの惑星の窮地の類似点を無視することは不可能です。ウィルスであれ気候変動の影響であれ、すでに苦しんでいる地域社会が最も苦痛を経験することになります。個人の健康は全体の健康に影響します。私たちのCOVID-19への対応方法は、気候危機の影響にどう取り組むかについて多くを語っています。

「最悪のシナリオで訓練を受けるのは、いいことだと思います」と農作物を受け取りに農場にやってくる車の列をチームが管理するのを見ながら、かすかに緊張気味にダンは語ります。(「反対側を向いてチームを監視しないようにしましょう」と、私をよけて温室の方を向きながら彼は笑います)「新しい警戒策と仕事量に対応し、ここの住まいで隔離され、閉所性発熱に対処しなければならないインターンたち。これらは火です。彼らを長年の虐待に耐えられるように鍛造し、より強靭な農家にするための。なぜなら農業は過酷なものだからです」

小規模のオーガニック農家が今日よく使う言葉は「旋回」です。サンフアン・キャピストラノのエコロジー・センターはより多くの家庭を食べさせるため、農場共有メンバーの数を2倍にする特別な「復活ボックス」に着手し、農産品と農家直送製品の道路脇ピックアップと非接触による配達を提供しています。メリーランド州のムーン・バレー・ファームはその操業に配達用トラックを追加し、オンラインで注文を受け、レシピのアイデアまでついたCSAシェアの「アラカルト」を提供しています。オレゴンを拠点とする農家のためのソフトウェア・プラットフォームであるローカル・フード・マーケットプレイスは、毎週10〜20の新しいユーザーをもたらしています(通常は年間50人)。若い農家は迅速に適応し、人びとがたったいま必要とするものを提供できることを証明しています。たとえば逸話的ですが、全国の各地方でより多くの人びとが地元農家を発掘するにしたがって、CSAシェアとファームスタンドが売り切れを報告していると〈ロデール〉は言います。

「農業に従事する私たちは、より多くの人に伝わる方法でそれを行っています」と〈ロデール〉のインターンであるデライラは説明します。農業は辺鄙な場所だけでやるものだとは思いません。農業はあらゆる場所の地域のあらゆる種類の人ができるものです。新しい小規模ビジネスの多くがより若い人によって運営されており、私の世代が小規模地域のシステムの再建を援助していると感じます。このパンデミックによって制限を受けながらも、その土地の食糧源に向けた前進的な運動のはじまりのように感じられるのです」

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〈ロデール〉のメインの農場の構内の周りで日々の雑用をこなしながら手を汚すインターン、ブリー・ハーシ。photo:Johnie Gall

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