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となりの掘削を永遠に終わらせよう

ジーナ・ロドリゲス  /  2024年5月8日  /  読み終えるまで6分  /  コミュニティ, アクティビズム, カルチャー, スポーツ, ハイク, 環境

基本的人権を求め、ビッグ・オイルは次の闘いへ。

STAND-L.A.所属のパタゴニア助成先「コミュニティーズ・フォー・ア・ベター・エンバイロメント(より良い環境のための地域社会)」の若き活動家たちは、近隣のカリフォルニア州ウィルミントンの石油・ガス施設を眺める。Photo: m. estrada

気候危機は、私たちすべてに影響する。しかし、一部の人たちは私たちよりも大きな影響を受けている。

現在、カリフォルニアでは270万人が汚染された油井またはガス井から600m以内に住んでいる。その影響はゾッとするものだ。このような環境の近くに暮らす住民は喘息が次第に当たり前になり、癌のリスク率も跳ね上がり多くの住民が日常的に片頭痛や発疹に悩まされている。

サウス・ロサンゼルスのナレリ・コボを例にすると、コボは9歳の時から鼻血をだすようになった。自宅の向かいにある油井から耐えがたい臭気に気付き、彼女は近所の家を1軒1軒、臭気がするかと聞いてまわると、ある疑問に辿り着いた。なぜ、近隣住民は不気味なほど似た症状で悩まされているのだろうか?

コボはすぐに健康被害がサウス・ロサンゼルスに限ったことでないと知った。カリフォルニ州やアメリカ全土で彼女のように低所得のラテン系・黒人系社会に、同様の事例があることを知った。そのようなコミュニティでは、活発で集中的な油・ガス井の近くに居住する率がはるかに高く、外部の人々からは「犠牲地区」と呼ばれていた。

近隣住民と会話を持つようになってから、コボはアクティビストへの道を歩み環境正義の団体である「Stand Together Against Neighborhood Drilling L.A.(STAND-L.A.)」に参加するようになった。この連合体は、彼女と同じような境遇にあるコミュニティが暮らしや遊び、礼拝を行う場所の近くに、新たな油井やガス井の掘削を市や州全域で禁止するよう訴えていた。しかし、彼女が自ら組織を立ち上げた頃、体調はさらに悪化し動悸や慢性的頭痛を伴うようになっていた。そして最初の鼻出血から10年後、19歳の時に癌と診断された。

2022年、STAND-L.A.は、他のいくつかの団体と共に、自らの要求を勝ち取った。カリフォルニア州知事ギャビン・ニューサムの署名により、州上院法案1137号(SB-1137)が成立し、この法律によって住宅、学校、病院、礼拝所などの「感受性受容体」の1km以内では、新たな油・ガス井が禁止され、また既存施設についても、より厳格な健康・安全基準が保証されるようになった。「法律の成立を聞いた時は、泣きだしてしまいました。喜びと力強さに圧倒されてしまって」とコボは振り返る。「数年ぶりに再び息ができた気がしました」

予想通り、すぐに石油会社は法律を覆そうと画策した。そのような中で私たちは2024年を迎えた。一握りの化石燃料大手が、「エネルギー封鎖を止めろ」を旗印に、州民投票への出資に成功したため、SB-1137が発効するにはカリフォルニア州民が今年11月、同法案に賛成票を投じなければならない。簡単に言うと、少数の石油・ガス企業がSB-1137を差し止め、できれば覆そうとしている。

サクラメントを本拠とするカリフォルニア独立石油協会(CIPA)は、昨年この「拒否州民投票」を発起し、2024年のカリフォルニア州総選挙で実施するために十分な署名を集めようと、総額2,000万ドルの大々的キャンペーンに出資した。CIPAは現在、西部州石油協会と共に、選挙民を揺さぶりSB-1137に水を差そうと、化石燃料業界が出資する利益団体にさらに巨額を注ぎ込んでいる。

この闘いの結果は、他人事ではなかった。パタゴニア本社のあるカリフォルニア州ベンチュラは、州内第3位の産油郡であり、8,000人以上の住民(その大半はラテン系)が油井から800m以内に暮らしている。

となりの掘削を永遠に終わらせよう

パタゴニア本社に近い、カリフォルニア州ベンチュラの自転車道を油井ポンプジャッキが陣取る。ここには800人のパタゴニア従業員の家がある。Photo: Tee Smith

このような事態こそ、2022年にパタゴニアの創業者が会社の所有権をPatagonia Purpose TrustとHoldfast Collectiveに寄贈した理由だ。したがって、私たちは環境活動に緊急の必要性を見いだしたら、すぐに介入し、よりよい形で応じることができる。

この選挙期間中、パタゴニアの利益を環境目的に割り当てる非営利団体のHoldfast Collectiveは、SB-1137が全面的に施行されるように、「キャンペーン・フォー・ア・セーフ・アンド・ヘルシー・カリフォルニア」において、草の根運動のパートナーに50万ドルを寄付している。この法案は常にそれを目指していた。

「近隣の掘削は、最前線のカリフォルニア地域社会をほぼ1世紀にわたって苦しめており、それは環境活動にとって大きな障壁です」とHoldfast Collective代表のグレッグ・カーティスは言う。「きれいな空気、きれいな水という基本的人権を法制化するために長いこと闘ってきた最前線の人々を支援できることを誇りに思います」

カリフォルニア州内では、ほとんどの選挙民がこの当たり前の法律を支持しているが、一握りの企業関係者が巨額を投じ、陰湿な作戦でそれを覆そうとしている。パタゴニアの寄付は、この法律を守るために闘っている公衆衛生の専門家、環境正義団体、コミュニティや信仰のリーダーらの同盟に直接送られる。

「有害な石油掘削から地域社会を守ろうとする新しい法律に異議を唱え、弱体化させようとする石油大手の欺瞞的キャンペーンは恥ずべきことで、彼らは最終利益を守るためなら何でもします」ダリル・モリナ・サルミエントは言う。サルミエントはコミュニティーズ・フォー・ア・ベター・エンバイロメントの代表であり、この組織はSTAND -L.A.やキャンペーン・フォー・ア・セーフ・アンド・ヘルシー・カリフォルニアの共同創設メンバーである。「だからこそ、カリフォルニア州民が、家、学校、病院の周囲に1kmの緩衝地帯を設ける法律に賛成票を投じるように、若者や石油掘削に隣接して暮らす労働者家庭を含む、私たちの広大で多様な同盟は、選挙の日まで毎日活動します」

居住区での新たな油・ガス井の禁止および既存施設の安全強化は、私たちが化石燃料社会から移行するために最低限必要なことである。「エネルギー封鎖を止めろ」は、化石燃料産業という、より複雑な機構の1つの動きにすぎない。この産業は、ある郵便番号の地区にたまたま生まれた人々を標的にして、全人類の犠牲の下で利益を生み出している。今のところ、力を合わせ、クリーンな環境という万人の権利のために共に闘う以外、気候危機から脱出する道はない。そしてその一環として、石油大手の行く手に立ちはだかろう。

現在、コボの癌とは闘っていない。けれど、彼女は今も同じ闘いを続けている。SB-1137は法律として存続すべきだ。そうでなければ、彼女と同じ運命をたどる子どもたちが増えるかもしれないのだから。

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