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音楽的クライミング・アンバサダーから届いたハッピーなジャングル・ジャミング遠征レポート

 /  2012年8月20日 読み終えるまで12分  /  クライミング

美しいテプイの1つ、アコパンを背に夢に向かって進むニコ。Photo: Xpedition.be

音楽的クライミング・アンバサダーから届いたハッピーなジャングル・ジャミング遠征レポート

美しいテプイの1つ、アコパンを背に夢に向かって進むニコ。Photo: Xpedition.be

クライミング遠征を終えたばかりのベルギーの音楽的クライミング・アンバサダー、ニコ・ファブレスショーン・ヴィラヌエヴァが、新ルート2本の詳細を含む遠征レポートを送ってくれました。ニコとショーンからのこの最新の音楽をお楽しみください。

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2012年1月31日
なんと僕らはまたビッグウォールの冒険に向かっている。2月5日、神秘的なベネズエラのテプイ(テーブル状の山)でのビッグゥールのジャミングの旅に出発し、そしてこの巨大なジャングルで初登と処女壁を探すのだ。登攀とジャミングの困難さに加え、ヘビ、クモ、スコーピオン、ワニ、サルなど面白い動物もいる。彼らが僕たちの音楽を気に入ってくれるといいんだけど。

僕らはジャングルでの45日間の自治の生活に向かっている。チームはおなじみの札付きメンバー、ショーン・ヴィラヌエヴァとニコラス・ファブレスに加えて、『Asgard Jamming』(DVDは僕らのウェブサイトで入手可能)でフィーチャーされた、前回のバフィン島への遠征で一緒だった若くて凄腕のベルギー人クライマー兼ドラマーのステファン・ハンセンス。さらにすごく才能あるクライマーで実験的シンガーかつプロの写真家のジャン–ルイ・ヴエルツも同行する。

もちろん僕らは全楽器を携帯し、地元の先住民の人たちや遭遇を期待するすべての動物たちと新しいレパートリーを作ることを楽しみにしている。僕らの最初の目標はアムリと呼ばれるテプイで、そこにはオーバーハングしたビッグウォールのひとつがあるかもしれないんだ。600メートルの滝と逆さまになった植物、9a+を登るスコーピオンがいるという噂を聞いたことがある。http://www.xpedition.be/または僕らのフェイスブックのページでこの遠征の音楽とクライミングの様子をチェックしてほしい。

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アコパン・テプイ。Photo: Xpedition.be

2012年2月8日
皆の調子はどう?ここベネズエラでは置き去りにしてきた冬とは対照的な40°Cの暑さを楽しんでいるよ。コンディションは極端だし、泳ぐときはワニに気をつけなきゃならない。地元の人たちは僕らにこう尋ねるんだ。ここシウダ・ボリーバルに滞在できるのに、なぜわざわざ大金をはたいてジャングルへ行って苦しむのかってね。だったらこのプールの横で過ごそうかな。ここでも状況は十分極端だからね。

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2012年2月24日
ようやくチームからニュースが届いたよ。アムリの初登を終えたばかりだって。ジャングルの奥深くにある、カラフルな600メートルのオーバーハングの壁だよ。登攀は9日を要した。壁でのジャムセッションではいいスイングができたことは間違いない。彼らは下山して、次の冒険の準備中。続編をお楽しみに!

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アムリ・テプイへの道のり。背後にはトゥユレン滝が見える。Photo: Xpedition.be

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アムリ・テプイ山頂の様子。Photo: Xpedition.be

2012年3月3日
チームはジャングルの川のそばで数日間、休息した。出会ったクモとヘビのサイズに失望した彼らは、20日分の食糧をパックに詰めて、本当の生活、つまり新しい600メートルのオーバーハングの遊び場に戻ることにしたんだ。2日前にアムリに新しいラインを見つけたあと、彼らは最初のピッチに素早くギアを配置した。「これまでで最も魅力ある困難なライン」だそうだ。

ニコはフリー化の準備をするため、初日5時間の人工登攀に精を出した。その少し後にショーンがトライし、セットしたほとんどすべてのギアが外れて伝説的な40メートルの墜落、ビレイしていたジャン-ルイの手はロープバーンで火傷。いま彼らが芸術のまっ最中にいるのは間違いない。

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野生の豚の攻撃を免れる最善策。Photo: Xpedition.be

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ロープバーンでケガをしたJLの手に新しい手術の方法を試みるニコ。Photo: Xpedition.be

2012年3月15日
昨夜チームからメッセージを受け取った。
彼らの調子は良いそうだ。壁で数日頑張ったあと、食糧が尽きて下山したとのこと。ロースト・クモにはもううんざりしているんだろうね。壁で実際に何をしたかは教えてくれなかったけど、何日後かに帰途につくはずだ。次のニュース(そして写真)をお楽しみに!

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ボーイバンド。Photo: Xpedition.be

2012年4月3日
by ニコ・ファブレス

ショーン・ヴィラヌエヴァ、ステファン・ハンセンス、ジャン-ルイ・ヴェルツと僕は、ジャングルで38日を過ごしたあと、文明に戻ってきた。本当にいい冒険だった。これまでにしてきた他の遠征と比べると、とても異色だった。天気、岩、ジャングル、先住民、動物、そしてトゥユレンの滝はとてもエキサイティングな瞬間をもたらしてくれた。僕らはトゥユレン滝の壁に2本の新ルートを開拓できた。1本は左側の「マリア・ロサ」、もう1本は右側の「アピチャバイ」だ。

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アムリの1本目のルート(紫色)。3ピッチのバリエーション付き。「キッズ・ウィズ・ガンズ」は壁をシェアしたチームが設定したルート。Photo: Xpedition.be

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アップデート:ルートをより鮮明にした新しい写真。赤の線が「マリア・ロサ」でオレンジ色はフリーのバリエーション。青のラインは僕らが開拓した2本目のルート「アピチャバイ」。グリーンはメイソンの遠征チームが開拓した「キッズ・ウィズ・ガンズ」Photo: Xpedition.be

僕らがジャングルを抜けてはじめてこの壁の真下に到達したとき、それはとてもオーバーハングしているように見えて、僕らを威圧した。この壁をフリーで登ることが可能かどうか、それ以上に僕らが献身するスタイルで登れるかどうか、疑問だった。下からは明らかなラインは見えず、クラックもあまりなく、壁の傾斜は容赦ない。——それはこのサイズの壁で僕が見た最もかぶった壁だった。友人のメイソン・アール(米国)、ジョージ・ユーリッチ(英国)、ジーバ・ヴァンヒー(ベルギー)、サム・ファーンズワース(英国)が10日前に取り付いていて、壁の中央にある明らかなラインの1本のかなり上の方でぶら下がっていた。これはちょっとしたおもしろい偶然だった。僕らは良い友達で、同じ計画だということを知らずに、同じ場所へ行こうと決めたのだった。

マリア・ロサ:7b。500メートル。ボルトもピトンもラッペルステーションも一切なし。

壁の右側はほとんど不可能に見えた。中央は他のチームがおもなライン(これもとても不可能に見えたけど)を占領していたので、まず左側に見つけた魅力的なラインをトライすることにした。最初のピッチを登ったとき、ここでのビッグウォール・クライミングは僕らが慣れ親しんだものとは完全に違うことに気付いた。それは傾斜がきつく、ホールドはたくさんあるものの、そのほとんどは水平で、次に何がやってくるかを予期することがとても困難なのだ。ただ各セクションを思い切って登り、最善を祈るしかない。未知に向かって直登するよりも、しばしば最も心をそそられる解決策はトラバースだった。

クライミングは険しく冒険的だった。けれども岩には多くのホールドがあり、かなり継続的ではあったものの、思ったほどむずかしくはなかった。僕らはわずか4日でかなり上の方にある巨大なルーフの下に到達した。そこには完璧な10メートルのクラックがあった。400メートルの純粋な露出だ。僕らはヤル気満々だったが、残念ながらこのクラックに到達するためには極端なボルダリングムーブをこなさなければならず、フリーでは誰も登れなかった。だがルーフ・クラックはとても美しく、信じられないけれど、僕らは2日間ただ楽しむためだけにそこで過ごした。それからいよいよ登頂に向かうとき、僕らは2グループに分かれた。1グループはルーフを回避してフリーのバリエーションを作り、もう1グループは最も理論的なオリジナルのラインを完結させることにした。だからルートには2つの終了点がある。1つはすべてフリーでルーフを避け、長い3ピッチを左にトラバースしてトップアウトする。もう1つはC1のエイドを数ムーブ経由してルーフを直登する。

僕らはギアを全部荷揚げすると、テプイの上で丸一日過ごして、この魔法のような場所の美しさを堪能した。そして翌日、壁の左側のベネズエラ人によるルート「ワクペロ・アムリ」を下降した。このおかげで僕らのルートにはギアを一切残さずに済んだ。僕らはマリアと呼ばれる地元のクッキーにちなんで、新ルートを「マリア・ロサ」と名付けた。そのクッキーからはときとして驚きのイチゴの中身が出てきた。

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マリア・ロサの第1ピッチでジャングルから抜け出るショーン・ヴィラヌエヴァ。Photo: Xpedition.be

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マリア・ロサで足を振るジャン-ルイ・ヴェルツ。Photo: Xpedition.be

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マリア・ロサの2ピッチ目を登って行くニコラ・ファブレス。Photo: Xpedition.be

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マリア・ロサからの険しい眺め。Photo: Xpedition.be

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マリア・ロサの凄いルーフ・クラックで楽しむステファン・ハンセンス。Photo: Xpedition.be

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マリア・ロサの終盤ピッチで巨大なルーフをトラバースすることに決めるニコラ・ファブレス。Photo: Xpedition.be

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マリア・ロサの終盤ピッチの1本をセカンドで登るジャン-ルイ・ヴェルツ。Photo: Xpedition.be

アピチャバイ:8a+。500メートル。ボルト5本。

マリア・ロサから下山した僕らは、食糧調達のためにちょっとユネックまで買い出しに行った。そこで帰路につくもう1つのチームに出会った。ずっと横で登っていた彼らを見てはいたが、滝の音で会話はできなかった。彼らは壁の中央に開拓したライン「キッズ・ウィズ・ガン」のフリー化を勧めてくれた。フリーで登れると思うと言う。でもアムリに戻った僕らは今度は、(ほぼ確実に)不可能な右側に新しいラインを開拓する冒険に心をそそられた。

僕らが選んだラインで明らかだったのは最初の2ピッチだけで、それほど険しくはないように思えた。残りはオーバーハングした珪岩の海のようだった。すぐに僕らは困難なピッチ、植物、ヤバいギア、そして脆いブロックに直面した。ショーン・ヴィラヌエヴァは2ピッチ目のレッドポイントを試みたときに40メートル墜落し、5個のギアが外れた。そのうち3個は少々泥があったものの、完璧に見えたものだった。ありがたいことに地面まではあと20メートルほどあり、壁があまりにもかぶっていたおかげで、ぶつかったのは空気だけだった。だがビレイしていたジャン-ルイは両手にかなり酷いロープバーンを被った。僕らはしばらくのあいだ彼が留まるべきか、深刻な感染をさけるために帰国すべきかを決めかねた。しかし4日後には彼の火傷はよくなっているようだった。だからクライミングはできなかったが壁で一緒に過ごすことに決めた。

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ショーンの墜落の詳細。Photo: Xpedition.be

この登攀ではこの他にもたくさん、全員の回数を合計すると約20回の墜落をした。ピッチ4、6、7は、ルートは壁の最もオーバーハングした部分を走っていて、フリー化の核心部。グレードは8a+までだ。このルートの15ピッチのうち、オンサイトしたのはたったの4本。残りはむずかしく、フリーで登るためには壁のクリーニングと、エイドでムーブを研究して、プロテクションを下見する必要があった。

最もスゴイことはこの壁をフリーで登るラインを僕らが実際に見つけたことだ。多くのセクションはたった1つのホールドのおかげで登ることができた。壁での最後の4日間は、毎日毎日、今日こそトップアウトするだろうと思ったが、予期していなかったハードなセクションを解決し、クリーンニングして、レッドポイントしなければならなかった。壁をトップアウトすることはできなさそうに思えて、僕らはその可能性を疑うというはじめての経験をした。だがついに頂上の茂った植物が見えて、僕らはふたたびアムリの上に立った。

僕らは合計で打ったのは、リード用のボルト3本とアンカー補強のためのボルト2本。このルートは14日を要し、そのうち4日はジャン-ルイの手が治るのを待っての沈殿だった。むずかしさはつづき、そのうちの8ピッチは7b以上だった。「アピチャバイ」とはユネックに住み、人間を捕らえてはテプイの洞窟で食べた巨大な鳥、トゥリトゥリを倒した勇士の名前だ。

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朝日に照らされるトゥユレン滝。Photo: Xpedition.be

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40メートルの墜落のあと、ピッチ2をレッドポイントする怖い物知らずのショーン・ヴィラヌエヴァ。Photo: Xpedition.be

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僕らのいつものちょっと厄介なビレイ。Photo: Xpedition.be

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毎朝のユマーリング訓練。Photo: Xpedition.be

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アピチャバイの6ピッチ目でヤバいスラブのムーブをこなすショーン・ヴィラヌエヴァ。Photo: Xpedition.be

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アピチャバイの核心ピッチのひとつをレッドポイントするステファン・ハンセンス。Photo: Xpedition.be

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アムリ・テプイの頂上でワイルドな感じの僕たち。Photo: Xpedition.be

僕らの夢の達成に協力してくれた次の皆に感謝する。ベルギー・アルパインクラブ、パタゴニア、ジュルボ、ファイブテン、ブラックダイアモンド、Seeonee、スターリングロープ、ベアール、Belcliimb.be、ペツル、Careplus、カタダイン、ノルディスク、ボリエール、クラックス、AVSアビエーション。

また地理的問題の解決に手をかしてくれたトレッケン・テプイのオリバー、僕らのパイロットのマルコス・ガルシアと、ジャングルでたくさんの荷物の運搬をサポートしてくれたユネックの親切な人たち全員にお礼を言いたい。

更なる詳細については今後数週間のうちにhttp://www.xpedition.be/フェイスブックのページに掲載予定。お楽しみに。このニュースを広めてほしいし、写真の使用も自由に使ってください。

じゃあね
ニコ、ステファン、ジャン-ルイ、ショーン

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2本のルートを開拓し、帰路につくハッピーなチーム。Photo: Xpedition.be

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