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深みの限界まで

マット・スクナージ  /  2020年9月17日  /  読み終えるまで5分  /  サーフィン

ペイジ・アルムスから借りた9'4"で、「ペアヒ」の高さと深さの限界に挑む 18歳のアニー・ライカート。マウイ Erik Aeder

2019年1月初旬、ペイジ・アルムスはマウイ島の自宅でワールド・サーフ・リーグの「cbdMDジョーズ・ビッグウェーブ・チャンピオンシップ」の興奮から覚めずにいた。大会は風が吹き荒れ、海面は分厚い50フィート(約15メートル)級のセットで幕開けした。女性の大会史上、最も大きく最も危険な波であることは間違いなかった。31歳のペイジは準決勝でその1本に乗ったが、あとの2本は頭の真上に食らい、ボードを折って太腿の裏の筋を痛めてしまった。その6週間後、「ペアヒ」としても知られるこの有名なビッグウェーブのスポットには、北西のスウェルの名残りがやっと寄せているぐらいで、貿易風は静まるとの予報だった。ペイジはオアフ島にいるケアラ・ケネリーとビアンカ・ヴァレンティに電話をかけた。彼女たちは「ジョーズ」の大会で一緒に戦った仲間である。

「私たちは皆、大会のトラウマが何かしら残ってたのよね」と、ペイジは語る。「だから『ねえ、もし何も用事がないなら、何日か一緒に過ごさない?ほら、前から話してた女の子のこと覚えてる?彼女も誘いたいと思ってるんだ』って伝えたの」

その女の子とは、当時17歳にして万能オーシャンアスリートのアニー・ライカート(現在18歳)のことだった。マウイ島はさまざまなマリンスポーツを楽しめることで有名だが、アニーはマウイの内陸にあるプカラニで生まれ育ち、彼女とペイジはホオキパ海浜公園の海やハイク近辺のジムでよくばったり会っていた。「マウイは小さな島だから」と言うのはアニー。「ペイジのことはずっと知ってたけど、私にとってはひそかに尊敬する憧れの先輩っていう存在でした」年齢差にもかかわらず、マウイのノースショアで一緒にサーフィンやフォイルサーフィンを楽しむうちに、彼女たちが友情を築くのに時間はかからなかった。

“「私の面倒を見てくれる人がいなかったら、ビッグウェーブの世界に足を踏み入れることはなかったと思う」と、ペイジは言う。”

幼いころのペイジはおてんば娘だった。背が高く、自立心が強かった彼女は10歳のときに独学でサーフィンをはじめ、ほとんどの時間をビーチで男の子たちと一緒に過ごした。「10代の女の子がマウイで育つのは大変だったわ」とペイジ。「男の子のなかには本当に意地悪なヤツもいたし、自分で自分を守らなきゃいけなかったから、鎧を身につけているような感じだった」しかし誰もが意地悪だったわけではない。15歳になった彼女に 9’0″を貸し、マウイのアウターリーフまで連れていってくれたのはシェイパーのクリス・ヴァンダーヴォートだった。そのとき何度か波に叩かれながらも病みつきになってしまったペイジは、3年後にはジェットスキーに引かれて「ジョーズ」に挑んでいた。さらに10年後の2016年には、ワールド・サーフ・リーグが「ジョーズ」ではじめて女性のために開催したビッグウェーブ・チャンピオンシップで優勝。次のシーズンも優勝した彼女はこう語る。「私の面倒を見てくれる人がいなかったら、ビッグウェーブの世界に足を踏み入れることはなかったと思う」

深みの限界まで

ペイジは15年間のさまざまなアルバイトのひとつとして、他の人のボードの修理を生活費の足しにしていた。このごろは、彼女が作業場にこもるのは自分のボードが壊れたときだけ。マウイにある「SOSシェイプス」の工房にて。Photo:Amanda Beenen Cantor

だから2018年、アニーが「ジョーズ」に挑戦したいと言ったとき、ペイジは自分のターコイズブルーとイエローの9’4″を貸し、そこまでの道案内を買ってでた。ジムでトレーニングを重ね、〈ビッグウェーブ・リスク・アセスメント・グループ〉の安全研修を受け、慎重に、より大きな波へ、より大きなボードへ、と段階を上げていく。6か月後、ペイジはアニーの準備が整ったと感じた。
午前7時にペイジの自宅で待ち合わせた彼女たちは、ジェットスキーの装備を整えた。30分後にパドルアウトするころには、波は10~15フィート(約3~5メートル)まで上がっていて、十分に「ジョーズ」の基準を満たすサイズになっていた。海面はガラスのように滑らかで誰もおらず、ペイジ、アニー、ケアラ、ビアンカで午前中のほとんどを占領し、セットの合間にはおしゃべりまで楽しむことができた。ペイジはアニーに大会でセット待ちをする場所を教えるため、100メートルほど沖まで連れて行った。

アニーが方向を確認していると、次の波が迫ってきた。スポットにいたのはペイジだったが、彼女はアニーを推した。「ゴー、ゴー、ゴー!」アニーもためらわずに9’4″を即座に方向転換し、突っ込んでいく。立ち上がり、膝を内側に入れ込んで、真っ青に広がるフェイスのハイラインを保っていく。アニーが肩越しに振りかえると、方向転換したペイジが波に向かってパドルしていくのが見えた。2人はチャンネルまで乗り切ると、ビアンカとケアラの叫び声に応えるようにボードを蹴り、水の深みへと飛び込んだ。

「マウイには尊敬するサーファーがたくさんいます」と言うのはアニー。「カイ・レニーやイアン・ウォルシュもそうです。でも彼らとペイジの違いは、私はペイジをすべての面において尊敬しているということ。彼女の姿に自分の目標が見えるんです。男の人たちには、私とは違うやり方があります。ペイジは証明してくれます。サーフィン界に芽を出す若い女の子たちにも、それが可能だと」

今年の冬、カリフォルニアからマウイに移住した20歳のイジー・ゴメスも彼女たちの仲間入りをした。「若い世代の子たちが、たとえコンディションが最悪でも海に出ようとする情熱が、私にもとても刺激になるの」と言うのはペイジ。「彼女たちを手助けするだけじゃなく、彼女たちについていくために、自分も上達しつづけないとね」

編集後記:彼女たちのチームワークの成果が実ったようです。2019年12月の「ジョーズ・ビッグウェーブ・チャンピオンシップ」では、優勝したペイジにつづいて、アニーは3位に入賞しました。

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