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「サーフィンなんてダイキライ、サーファーなんてロクデナシ」

ブリッタニー・グリフィス  /  2011年10月17日  /  読み終えるまで5分  /  サーフィン, クライミング

JTが私を慰めているところ。「いいじゃないか、ベイビー。君がクールなのは僕が知っているから。いやいや、レンタカーを返しにシワタネホに行くのはいい案じゃないよ」Photo: Ben Moon

JT(ジョナサン・セセンガ)は、彼の40歳の誕生日を祝うためにバハへと旅立つ。クライマーの私はサーフィンはまったくダメだし、何度かこわい思いもしているから、「サーフトリップ」へ行くときはいつも不安になる。ペルー、エル・サルバドール、リオ・ネクスパと、なぜか私たちはリラックスした場所へは行かないみたい。つまり、5.4級レベルのクライマーをエル・キャピタンの取り付きに連れていき、カムのラックを手渡してから、「じゃあね、ハートレッジで会おうな」と言うようなもの。

でも前にリオ・ネクスパに行ったときの思い出を紹介するわ。

サーフィンなんてダイキライ、サーファーなんてロクデナシだ。またこてんぱんにやられてしまった。はじめてのことじゃない。今回は岸から1メートルのところで非情にも波に引き戻され、泡で薄くおおわれたリーフに叩きつけられた。片方の手でフィンから顔を守り、そしてもう片方の手で死に物狂いで立ち上がろうとしていたから、ビキニをなおすことなんてできなかった。砂地に安堵した私は、息を切らしていた。呼吸がつらかったのだ。髪がたてがみのように顔をさえぎり、鼻からは海水が流れ出していた。髪を払いのけると、3人のかっこいいサーファーがバンガローのベランダから私を眺めながら、クスクスと笑っているのが見えた。くそったれめ。そしてビキニのことを思い出した。私はビキニをもとの位置に戻すと、足をドタドタと踏みならしてその場から立ち去った。足につけっぱなしにしていたリーシュにつまずいて、右側のビキニが裏表になっているのに気がついた。

「あぁ、そうですか。でも私は5.13を登るクライマーなんですからね!」と叫びたい気分だったけど、涙をのんで我慢した。

「サーフィンなんてダイキライ、サーファーなんてロクデナシ」

JTが私を慰めているところ。「いいじゃないか、ベイビー。君がクールなのは僕が知っているから。いやいや、レンタカーを返しにシワタネホに行くのはいい案じゃないよ」Photo: Ben Moon

ハンモックで膨れっ面をしていると、小屋の大家さんのマリオの息子たちが、初心者ビーチからセッションを終えて帰ってくるのが見えた。彼らの顔はキラキラ輝いていて、足取りは軽快だった。皆が通り過ぎるとき、私は衝動的に身振り手振りで言っていた。「君らとサーフィンに行く!」 彼らは私のことを少し変な目で見たあと、ボードをもってはにかみながらうなずいてくれた。くるぶしから数センチのところまでくるような長いサーフショーツを履いた、身長1メートルほどのいちばん小さな男の子が、興奮しながら甲高い声でスペイン語をまき散らした。

「なんて言ってるの?」 私はJTに聞いた。

「6つのバンガローの掃除をして、ライム摘みとビーチを掃除したら、すぐに行けるよって言ってる」

マンゴスムージーとフィッシュタコスと大瓶ビールという贅沢ランチを満喫したあと、日陰で昼寝をした。

「サーフィンなんてダイキライ、サーファーなんてロクデナシ」

スペイン語の勉強中?もしくはトランスワールド・サーフでどうやったらサーファーらしく見えるかを研究中?Photo: JT

「準備はオッケー?!」 元気いっぱいの甲高い声で私は目覚めた。そのあとスペイン語とジェスチャーがつづき、私は自分のボードをつかむと、ホゼという名のふたりの男の子のあとを追った。いちばん小さな男の子と、彼より少し背の高い男の子だ。

「ねぇ君たち、私がスペイン語しゃべれないの分かってる?」

彼らが私を連れていったのは、荷台にボードをたくさん載せた錆と傷だらけのピックアップトラックで、そのうちもっと大勢の子供たちがやって来ると、荷台に乗りはじめた。もしかして私にこのトラックを運転してほしくて連れてきてくれたのかしら?そう考えはじめたころ、親戚の大人がやって来て運転席に乗った。

トラックの荷台で揺られながら、私は自己紹介をした。「私の名前はブリッタニーよ」 すると、彼らはいぶかしげな表情で私の名前を発音しようとした。

「ブリーニー?」

「スピアーズ!」 いちばん年上の子は口走ると、顔を赤らめた。

グループのなかでいちばん活発な子が、ひとりだけいた女の子を指差して、「彼女は今日はじめてサーフィンするんだよ!」と言った。かわいくて恥ずかしがりやのその女の子は、ボロボロで色のあせたラッシュガードとジーンズのショーツをはいていた。

メキシコ人の家族と私は1メートルほどの波へとパドルアウトした。傷だらけのボード(恥ずかしながら私のボードは新品だった)、色あせたネオン色の服、さまざまな人種、性別、年齢の人間が集まっていた。そして歓声と笑い声が波の音とともに私たちを囲んだ。

「ビッグウェーブだ!」 私がふらつきながらも腰の高さのモンスターウェーブを5秒間乗りきると、ホゼが大声で叫んでくれた。

ラインアップもなければ、理解できないルールや態度もない。私がワイプアウトしたときにあやうく巻き添えになるところだったおじさんでさえ、おもしろがっているようだった。時間はあっという間に過ぎ、もう夕食の時間だった。

「また明日ね!」 クラクラする幸福感とひどい訛りでそう言うと、私はリーシュを引きずりながら自分の小屋に戻った。サーフィンってタノシイ。サーファーってカッコイイ。

「サーフィンなんてダイキライ、サーファーなんてロクデナシ」

メキシコの僻地でのビッグデイから戻ってきたホゼ。Photo: JT

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