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労働者により多くの発言権を

レイチェル・G・クラーク  /  2019年1月4日  /  読み終えるまで10分  /  フットプリント

2人の子供をもつ35歳のエイドリアナ・ロブレスが2012年以来働くのは、メキシコのユカタン州バッカにあるフェアトレード認証衣類製造工場バーティカル・ニット。Photo: James Rodriguez

原材料から織物、裁断から最終製品の縫製まで、私たちが製造するすべての製品の陰には人間の重労働が存在します。しかし世界中で6千万人の労働者を有する衣類製造工場で働く人びとは、歴史的に標準以下の職場環境に晒され、問題を報告できません。1996年、パタゴニアがアパレル産業の労働慣行を向上させることに献身する〈公正労働協会(FLA)〉に創設メンバーとして加盟したのはそれが理由であり、私たちの製品の陰に存在するすべての人びとのために、公平で安全な就労環境を保証することをミッションとする理由です。それでも私たちは上意下達でこれを達成することはできません。パタゴニアのサプライチェーンの労働者のために正しいことを本当に行いたいなら、私たちは彼ら自身に、発言するより多くの機会を与える必要があります。

私たちは工場ひとつひとつに、労働者がみずからの権利のために立ち上がり、発言するプログラムを設定しました。労働者が団体交渉を通じて発言できることを保証する労働組合は大切なツールですが、すべての工場で可能ではないため、私たちは彼らの声を職場で促進するための新しい方法を見つけなければなりませんでした。

フェアトレードが管理者との会話のきっかけとなる

2014年にはじめてフェアトレード・サーティファイド縫製の製品を導入したのは重要な第一歩でした。フェアトレードを通して、参加ブランドはフェアトレード水準の認証を受けた工場で作られた全製品にプレミアを支払います。この基金は民主的に選出された労働者の委員会によって管理され、委員会は工場の労働者が必要とするものを査定したあと、そのお金をどう使うかについて意見交換し、最終的にその用途を決定します。このプロセスにより、多くの労働者の人生に影響を与える重要な問題についての、彼らと管理者との対話がオープンになります。

労働者により多くの発言権を

Photo: Ryan Craig

2014年にインドのフェアトレード認証工場の労働者委員会で、労働者はしばしば見逃される基本的な必要性について話し合いました。多くが望んでいたのは、次のモンスーンシーズン時の通勤の際に濡れない方法を見つけることでした。工場提供の寮に住む労働者の希望は、食事を作るための共有の台所でした。これらの労働者はまた、週末に訪れる家族のための宿舎も希望しました。これらの必要性を知った工場経営者は共有の台所を設置する経費を受け持ち、訪問者のためにいくつかの部屋を用意しました。これにより労働者はフェアトレードのプレミアを、レインコートの購入に充てることができました。このプロセスを通して、ありがたい改善がなされたのです。

変革を起こす安全で信頼できる方法を据える

私たちの工場すべてでこれを実現するため、私たちは独自の「グリーバンス・システム(苦情システム)・ツールキット」の開発に乗り出しました。これはパタゴニアの工場で、労働者が自由に懸念を経営者と分かち合い、これらの問題が素早く対処されるためのトレーニング、ガイダンスと査定の書類のシリーズです。ツールキットを使って、それぞれの工場は労働者委員会、訓練を受けた苦情処理人、一般労働者のフォーラム、あるいは調査、門戸開放制度とホットラインを含む、彼らそれぞれの状況に見合った最善の苦情処理システムを検討しました。

「工場がより高品質で信頼のおけるメカニズムを提供できればできるほど、良いです」と話すのは、パタゴニアのソーシャル・レスポンシビリティ/トレーサビリティのディレクターのウェンディ・サベッジ。「労働者の懸念を共有するためのより多くの方法を彼らに与えることで、その機会が増えます。門戸開政策だけでは不十分です。調査も不十分です。私たちは労働者が安心して、工場経営者との信頼を築きはじめるよう、彼らの懸念を伝えられる多くの選択肢をもたせたいのです」

システムは工場が達成すべき4つの段階を概要しています。「レッド」指定を受けた工場は適切な苦情システムがなく、それを導入するために取り組まねばなりません。パタゴニアの最低水準である「ブロンズ」要件を満たす工場はいずれも、労働者が利用できる最低2つの適切な苦情システムがなければならず、そのうちひとつは匿名によるものでなければなりません。「シルバー」指定は複数の苦情システムがあり、定期的なトレーニングを設け、苦情および工場が前向きに労働者に求めるその他のフィードバックに基づいた継続的な改善を取り入れなければなりません。「ゴールド」指定の工場は前出のすべての要件を満たし、さらにその苦情を一般公開し、改善を行うためのシステムを評価するために、第三者および労働者の関与が義務付けられます。本システムは工場に対して目指すべき明確な期待のレベルを設定し、そのためのガイダンスを提供します。

「私たちがやっていることが革新的だとは言いません。それは工場レベルでの苦情システムを改善し、労働者と経営者のあいだの信頼関係を長期的に築く、シンプルで実用的な方法です」と語るのはサプライチェーン・ソーシャル・レスポンシビリティ・マネージャーのアレクサンダー・キャッツ。「私たちのプログラムは工場システムの深い知識と問題をフォローアップする献身的なマンパワーを要します。サプライヤーとの長期的で継続する関係を設定することにより、それぞれの工場にかなった効果的なメカニズムを構築するために、密に仕事ができるのです」

「それは労働者が思っていることを発言できる、安全な場所です。同僚が何を必要としているかについて自由に会話をし、投票します。このプロセスにより、工場経営者は彼らが何を真に必要としているのかに耳を傾けることができるのです」とパタゴニアのソーシャル・レスポンシビリティ/ソーシャル・プログラムのマネージャー、トゥイ・ニュエンは語ります。

労働者により多くの発言権を

パタゴニアのフリースが製造されているフェアトレード認証工場ホング・ホーで働く人たち。メキシコ、バヤドリド。Photo: Keri Oberly

私たちのアプローチを調整する

これに対する責任の一部として、私たちは関係を築くために人びとを地元に送り、このレベルの信頼を築くことが重要だと感じました。2012年、パタゴニアはパタゴニアの最終製品を作るすべての工場を支援するために3人の現地マネージャーを雇用しました。

過去6年間にわたり、ジェラポルン・ロソングはパタゴニアの現地マネージャーとして4か国(スリランカ、バングラデシュ、タイ、インド)の20工場に従事してきました。これまでに彼女はほぼすべての工場をブロンズからシルバーに引き上げる後押しをし、そのうち2つはゴールドを達成しました。「これが工場にとって容易ではないことは理解していますし、これほどの高水準を履行することは難しいことです。しかしすべての工場がゴールドを達成するのが理想です」とロソングは言います。

それぞれの現地マネージャーは工場の実地検証と、異なる観点を収集するための労働者と管理者の面接を含む定期的な監査を実行します。彼らは定期的に連絡を取り、苦情システムのレベルを査定し、解決策を探るために共同で働き、工場ひとつひとつの進行を監視します。

「最初にガイドラインを導入したときは、少し大変でした」とロソングは言います。 「けれども、私たちが彼らと話をしていけばいくほど、彼らは私たちの意図を理解するようになりました。つまり最終的には工場の労働条件の改善になるということ。私たちは彼らを責めたいわけではありませんでした」

工場レベルで履行し、監視する苦情メカニズムに加えて、パタゴニアはサプライチェーンのホットラインを設定しました。世界中のあらゆる労働者がいつでも利用できるホットラインは、現地マネージャーがすべての出来事を調査し、なぜそれが起こったのかを学び、工場を訪問し、解決策を探り、労働者を保護します。認証評価の一環として、〈FLA〉はかかってくる電話すべてを確実にフォローアップし、パタゴニアが毎年受け取る苦情を評価します。

今年ある工場から電話が入ったとき、労働者が工場の未来について不安を抱いていることがわかりました。閉鎖されるかもしれないという噂を耳にしたのです。私たちは工場経営者と直接会話し、工場は閉鎖しないという保証を労働者に告げました。「労働者が私たちを信頼してくれていることを嬉しく思いますが、より理想的なのは、彼らが経営者に直接聞けるようになることです。この種の例は、工場にはいまだに隔たりが存在し、労働者と管理者はすべてのことについて対話をもちたくはないことを示しています」とロソングは言います。「こういったシステムが存在するのは、可能なときは工場と労働者がこれらの問題を内部で対処し、できないときも、労働者が私たちに問題を持ち込めるようにするためです」

パタゴニアが仕事をするすべての工場がより高いレベルの苦情処理を達成するための私たちの支援を歓迎していると、ロソングは信じています。「彼らは私たちが真に彼らを気遣っていることを知ってくれていると思います」と語ります。

学んだことを共有する

他のブランドが労働者の声を高め、アパレル産業に従事する労働者の状況を変えるために能動的に協力するプログラムの履行を奨励するため、パタゴニアは彼らと「グリーバンス・システム・ツールキット」を共有しました。また、最善慣行と、現在パタゴニアの製品ラインの40%にものぼるフェアトレード・サーティファイド縫製製品(アウトドア衣類のどのブランドよりも高い比率)の導入から学んだことも共有しました。

工場労働者の意見を聞く私たちの最新の努力として、私たちは火災安全/防止プログラムといくつかの労働福祉プログラムのひとつについての労働者のフィードバックを収集する、デジタルアンケート調査を試験的に行います。この取り組みは労働者のフィードバックを比較的早急に集める助けにはなりますが、その生来の制限については認識しています。解決のために信頼と自信を要するより深い問題について労働者と話し合うのに必要な個人的な関係を築くことはできない、ということです。すべての工場は独自性があるため、工場経営者によって支持される意義あるフィードバックを募るために労働者と関与するには、さまざまなツールを継続してもつことが必須です。

「最大の効果を与えるためには、労働者関与プログラムを業界の水準となるまで拡大できるよう、他のブランドからの支援が必要です」とニュエンは言います。彼女はこの変革のために最大の機動力を有するのは、おそらくブランドが最大の価値を据える声、つまり顧客であると信じています。「私たちはフェアトレード製品を購入し、その購買パワーによって、お気に入りのブランドにその重要性を示すことができます。サプライチェーンで何が起こっているかについての透明性を要求することができるのです」

私たちはかなりの前進を遂げましたが、多くの意味でこの仕事はまだはじまったばかりです。苦情システムのプログラムは、私たちの最終製品工場すべてに据えられてはいますが、原材料工場にもこのプロセスに参加してもらうべく努力しています。私たちの目標は何としてでも全サプライヤーがこれらのシステムを有するようになることです。

「毎日、私たちはミーティングで、するべき正しいことは何かについて対話していますが、ときとしてそれは振り出しに戻らなければならないということです。でも私たちは毎回そうします」とニュエンは言います。「その仕事量は膨大で、これからもまだ長い道のりが待っていますが、その成果が見えはじめてきました」

フェアトレードの全コレクションはpatagonia.jp/fairtradeclothingをご覧ください。

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