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シャツから土へ:パタゴニアのデザイン理念に関する考え

パタゴニア  /  2017年10月23日  /  読み終えるまで9分  /  デザイン

写真:Tim Davis

パタゴニアのシニア・クリエイティブ・ディレクターであるマイルズ・ジョンソンは、テクニカルウェアとライフスタイルの両部門における全デザイナーと、製品開発、テキスタイル、グラフィック、カラーの各チームの業務を監督しています。パタゴニアの託児所の外にあるピクニックテーブルで最近行われたこのインタビューでは、彼の仕事とパタゴニアのクリエイティブの過程における環境主義の役割について聞きました。

パタゴニアへの道のりはつねにさまざまな道が交差する場所のように思えます。あなたの背景について、そしてアウトドアに惹かれた理由についてお話しいただけますか?

私はイギリス中部のウルバーハンプトンに近い村、パティンハムで育ちました。村の端には田園地方へとつづく避難ルートがたくさんありました。私たちは学校から数キロ離れた場所に住んでいたため、兄弟姉妹たちと私は親密で、ほとんどの時間をアウトドアと周辺の農場で一緒に過ごしました。

父は子供たちにスキーを教え、そしてたいていは年末年始でしたが、毎年オーストラリアのチロル山脈のアルプバッハに私たちを連れて行ってくれました。私のお気に入りは山頂から松明を手に蛇のように下るスキーヤーに加わり、谷の反対側にある町から眺める人びとを楽しませることでした。

馬に装備と食糧を積んで山の峠を越える旅も大好きです。いちばん最近の旅は中国の近く、キルギスタンの天山山脈でした。次の旅はトランシルヴァニアのカルパティア山脈に行き、そこに住むカップルと一緒に狼の研究をしたいと思っています。

何があなたをデザインに惹きつけたのですか?

もともとは祖父のように画家を志望していました。ブラッドフォード・カレッジ・オブ・アート(デイヴィッド・ホックニーの母校)で学びましたが、以前ブラッドフォードは繊維産業で栄え、イギリスのウール繊維のほとんどを生産していました。私が通ったころは倉庫や織物工場はアーティストのスタジオやイベントのスペースに変わっていました。そこで過ごした後期に、私がおもに興味があるのは布地や衣類のデザインだということに気づき、BBCの『高慢と偏見』の制作でコスチューム・デザイナーとして仕事をすることになりました。私たちは俳優のために伝統的な布地に植物顔料を使って手で着色したり、パターンを作ったりしました。衣類が200年前にどう作られていたのかについて、あるいはなぜ鉱夫のポケットがある位置に配置されているのか、コルセットがどう進化したのかなどについて学ぶのは、とても魅惑的でした。何年も経ってから、ファッションと衣類のデザインについて学ぼうと、ロンドンのセント・マーティン・カレッジに入学しました。衣類が大好きなのにファッションには決して興味がなかった私には奇妙なことでしたが、衣類について学べる場所はファッション学校だけなのです。

シャツから土へ:パタゴニアのデザイン理念に関する考え

写真:Tim Davis

そこからリーバイスへ落ち着いたのですよね?

はい、リーバイスでプレミアムおよびビンテージ製品のクリエイティブ・ディレクターとして働いたあと、そこから手を広げていきました。3年ほど前にパタゴニアに入社するまで、リーバイスで14年勤めました。

パタゴニアの環境主義がデザイナーのあなたをどのように刺激するか、そしてその反対に、私たちのフットプリントに対する懸念がクリエイティブの過程を妨げる可能性について、話していただけますか?

素材が正しいものであるということは不可欠です。徹底的なやり方で素材の開発と改良に肯定的に関わり、それが悪影響を最も抑えた方法で確実に作られているというのは素晴らしいことです。

しかし素材に徹底的に関わるということは、同時に制限的でもあります。その結果、私たちは一般の会社よりもずっと少ない種類の素材しか使用していません。ですからもし問題があったとき、つまり在庫不足とか、織り方や編み方や染色などの品質に問題が発生したとき、代わりに工場にたまたまあった素材をつかんで、即座に変更を加えることなどはできないのです。私たちは他社のように軌道をすばやく変えることもできません。ですからよりじっくりと考えねばなりません。

品質テストは私たちの仕事の大きな部分を占めます。新しい素材を導入する際には、望んでいたよりも丸1年も余分にかかることもあります。なぜなら最初から正しい素材でなければならないからです。私たちはお客様に信用を植えつけたいのです。

そういったレベルにこだわることにより、革新や機能性が改善されますか?

新しい素材は持続性というレンズで厳しく目を通され、その基準に合格しなければならないため、機能性の向上につながり得ます。しかしパタゴニアのスタイルには、革新を必要とせずとも非常によく機能するものがある一方で、未だにバージン・ポリエステルやバージン・ナイロンを使用している伝統的なスタイルもあります。よってそうしたものの環境的な性能を、耐久性を含む品質を犠牲にすることなく改善することが課題として残ります。

私たちがより持続可能な素材を求めるとき、いつでも紡績工場が快諾してくれるわけではありませんが、パタゴニアがある素材について誰よりも長いあいだ使用しつづけるということ、またパタゴニアは他のブランドに影響を与えるため、最終的には新しい顧客を増やす良い市場となることを、彼らは理解しています。

シャツから土へ:パタゴニアのデザイン理念に関する考え

写真:Tim Davis

最近パタゴニアのテーブルを囲んで「不必要な悪影響を抑える」よりもさらに良い仕事をすることについて、実際に肯定的な変化をもたらし、生態系を修復または再生する手助けをし、自然から受け取る以上をお返しすることについて話しました。この努力により第一に焦点が当てられているのは、パタゴニア プロビジョンズと食品ビジネスを通して劣化した農地を健全なそれへと戻し、水使用の必要性と天然堆肥すらの使用を削減し、大気中の炭素を隔離して土壌に戻すためのものとしての農地の可能性を創造することです。それに関連する可能性が私たちの衣類にも見られますか?

私たちはヘンプに優れた再生可能性を見出しています。水をほとんど必要とせず、それ自体が堆肥、殺虫剤、除草剤として機能します。それは土壌にとっても有益です。ソフトなドレープを描くことからウィメンズ製品に利用されているテンセルは、廃棄物、くず、そして天然パルプの粉という面白い資源に由来する繊維です。

従来の衣類の製造について考えるとき、それが私たちよりも、私たちの孫の世代よりも長いあいだ地球に 存在することを忘れてはなりません。最終的に、天然素材で作られた衣類は堆肥化可能であるべきです。シャツが自然な寿命を迎えたら、それを土に埋めれば人参をより鮮やかなオレンジ色にしてくれるような。本体の素材だけでなくシャツの要素のひとつひとつ、つまり糸やボタンから裏地まで、すべてが 堆肥化可能でなければならないというのが、それにまつわる挑戦です。

素材だけでは話は完結しませんよね、デザインとデザインの詳細もまた最終製品を形作るものですから。パタゴニアのデザイン理念はあなたとあなたのチームの過程にどのように影響を与えますか?

パタゴニアのデザイン理念は制限的ですが、環境に対する私たちの懸念は良い意味でバイアスとして、シンプルさと実用性に向かわせてくれるので、その使用目的に集中することができます。またそれにより、パタゴニアのウェアであることが明らかになります。たとえラベルを取り除いたとしても、それがパタゴニアのものであることがわかるでしょう。他のブランドはクリーンな装いをデザインに採用しているかもしれませんが、私たちの場合は微妙な細部が一線を画します。それはアルパイン用パーカであれフィッシング用シャツであれ、またショルダーストラップのじゃまにならない位置に施した胸の縫い目だったり、カラーの組み合わせ方だったり、異なる素材を使用したチェストポケットだったりします。

困難なのは自分たちの安全地帯の外に出て、制限の範囲内で、あるいはみずから課した制限ギリギリのところで、何か新しいことをつねに試すよう自分を駆り立てることです。リサイクル素材や再利用素材だけを使用した特定のテーマの小規模コレクションは、そうした挑戦に有効でした。

シャツから土へ:パタゴニアのデザイン理念に関する考え

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あなたがチームとどのように働いているか、もう少し話していただけますか?

パタゴニアのデザイナーたちが新しいスタイルに取り組んでいるとき、私はしばしば2つの種類について考えるよう求めます。1つ目は基準を引き上げるもの、つまり驚きや活気、インスピレーションを与えるもの。2つ目は単刀直入で、使用目的を完璧に満たすもの。次に、私たちは問いかけます。それはどちらか1つでないといけないのか、と。最高級で比類のないオリジナルな製品を生み出す、両方の要素が存在するだろうか、と。

私たちの最高のアイデアのいくつかは、いまではパタゴニアのアーカイブによってもたらされます。そこにはパタゴニアが長年にわたって製造してきた多くのスタイルが保存され、そのコレクションは私たちに驚くべき多くのアイデアを提供してくれます。おそらく最初はそれほど素晴らしいものではなかったかもしれませんが、そのデザインは非凡なモダンさで漸進的な、新しい何かとして作り出せるしっかりとしたものです。それが流行ではなく、時代を超越したデザインと機能に長いあいだこだわってきたことの美徳です。

未来についてはどうでしょう?

私たちはつねに機能性を改良するための技術的な革新に取り組んでいます。将来的には、さらに幅広い状況で快適さを提供する多用途型のウェアを作ることができるはずです。暑いときは日差しから体を守って快適で、天候が変化したら温かくドライに保ってくれるジャケットを想像してみてください。非常に多用途に使えるウェアは資源の使用を減らし、より多くの利点を着る人に提供します。

パタゴニアのOctober 2017カタログに初出のストーリーからの抜粋です。

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