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コーミング・ザ・コースト:ビーチのゴミ拾い

マルコム・ジョンソン  /  2011年9月20日  /  読み終えるまで9分  /  アクティビズム, コミュニティ

フローレス島で夕方サーフィンに出掛ける。Photo: Malcolm Johnson

コーミング・ザ・コースト:ビーチのゴミ拾い

フローレス島で夕方サーフィンに出掛ける。Photo: Malcolm Johnson

カナダ沿岸でのサーフィンについての記事を読んだことがある人は、この地域がいかに手つかずのままであるかというお決まりの文章を目にしたことがあるに違いない。クマやオオカミがキャンプ地を徘徊し、ラインアップはアザラシやクジラで活気づき、水はサイケデリックでピュアなグリーン。そして樹木のカーペットに覆われた山々。

カナダの著作家でサーファーでもあるマルコルム・ジョンソンがクリーネストラインに再登場です。今回マルコルムはクレヨコット・サウンドの美しい未開の島への旅に私たちをいざない、海洋汚染の信じがたい現状について開眼させてくれます。

たしかにこれらは真実といえるだろう。僕の住む街では食べ物は容易に手に入るし、森は更新世のときからのままだ。しかし同時にこれらは誤解を招く恐れがある。あるいは、一部においてのみの真実だ。ブリティッシュ・コロンビア沿岸はその美しさと生物多様性をおおむね保持してきた。けれども現代社会のプレッシャーから無縁の産業革命以前の田園風景でもない。それはイメージの問題だろうと思う。サーフィンや旅行誌で、このエリアの自然の特性について語られているのをよく見かけるが、魚養殖場から出る排泄物や林業のゴミで埋まった遡上魚産卵のための小川、あるいはサーフィンとエコツーリズムをおもな産業とするトフィーノの街がクレヨコット・サウンドに下水を直接垂れ流していることなどについてはあまり語られていない。現実はこの沿岸も環境劣化の圧力の前には他の地域と同じように脆弱なのだ。ノーザン・ゲートウェイはその最も心配される例のひとつで、このパイプラインのプロジェクトが実現すればタンカーの交通量が増え、グレート・ベア・レインフォレストを脅かすことになる

どんな場所も独立して存在するということはない。おそらく僕たちが大きな世界とつながっていることを示す最も明らかな例は、僕らの海岸に流れ着くゴミの量だろう。奥まったビーチのどこを歩いていても、さまざまな種類のゴミを目にする。流木と海藻に混じって満潮時の潮位に留まるゴミのほとんどはプラスチックだ。ビーチのゴミのほとんどは遠くの地から海流に流されてやってきたもので、人のあまり住んでいない海岸線がゴミでいっぱいなのは、人類がいまだに海を巨大な廃棄物処理場としてあつかっている証拠だ。カイル・ティアマンが彼のビデオで言っているが、使い捨てのプラスチックにとって遠すぎるという場所はない

ここでお伝えしておかなければならないが、僕は10年前に大学を卒業して以来、カナダの海岸についての著作家として、そしてしばしば旅行業界のコピーライターとして、生計を立てている。だがここ数年間、僕は愛する海岸線を守るために十分な貢献をしていないことに気付きはじめた。それらから利益を得ていながら、それらにお返しをしていないことを。直接ダメージを引き起こすことはないにせよ、僕の人生が受動的になりすぎていることに目覚めた。そして受動的であることは、原生地にゆっくりと確実にダメージを与えている世界中のシステムに事実上参加するのと同じことだということに目覚めはじめたのだ。その気付きはしばらくのあいだ僕の魂を苦しめたが、同時にすでに知っていた事実を再確認させられることにもつながった。それはもし効果的でありたいなら、そして周囲にあるものを保護したいのなら、ただ考えたり発言したりするだけではダメだということだ。行動を起こさなければならない。自分の手を少し汚して、それがどんなに無力に感じられても最初の数歩を歩みはじめなければならない。トライしていること、できるだけのことをやっていることを感じなければならないのだ。そうしなければ自分のなかにある何かがダメージを受ける結果につながる。エドワード・アビーがこう書いた。「行動を伴わない感情は堕落した魂だ」と。

僕にとってのその小さなステップのひとつは、サーフライダー・ファウンデーションが組織する海岸のゴミ拾いに参加することだった。この連盟はカナダでは小規模だが、バンクーバー・アイランド支部は威勢のいい小グループで、サーフィンのできる海岸に対する人間の影響を軽減させる多くの良い仕事をしている。たとえ数人の人びととボトルを拾う一日を過ごすだけでも、多大な結果をもたらす。実用的なレベルでは自分の身近にある環境を向上させるための仕事で、象徴的なレベルでは僕らの地球を汚し、多様性を損なう力に屈しないということを表す。「足跡を残さない」はアウトドアでは素晴らしい哲学だが、ときとしてその一歩先へ進み、僕らの土地をより良くする仕事に取り組まねばならない。

ということで、友人のルーカス・ハリスが電話でサーフライダーがトフィーノの北にある道のない遠隔の島のひとつの清掃を計画していると教えてくれたとき、僕はぜひ参加したいと思った。今年はBCパークスが設立されてから100年目になる。清掃はフローレス島マリンパーク内で行われる。ルーカスはこの旅の経費をカバーする政府からの助成金を獲得していた。サーフライダー支部は「コーミング・ザ・コースト」と命名したキャンペーンをローンチし、今回の清掃作業が年間シリーズとなる原生地で実施する最初のそれだと教えてくれた。カナダの沿岸警備隊もこのプロジェクトを支援するために僕たちをカウ・ベイまで運び、数日後に一行とゴミの貨物をトフィーノまで連れて帰る計画を立てていた。

ほのかに温かい春の午後、僕らは警備隊のしっかりしたゴムボートに乗り込み、フローレスへ出発した。クレヨコット・サウンドの大きな島のひとつだ。フローレスは森林に覆われた、マンハッタンの2倍ほどの大きさの土地で、そのほとんどが原生の森である。ファースト・ネーションズのコミュニティであるアホウサート族の900人が島の東側に居住し、西側は無人でカヤッカーやワイルド・サイド・トレイルに訪れるハイカー数人を除いては人間が訪れることはめったにない。カウ・ベイの安全な入り江に送ってもらったあと、僕らはテントを張って、就寝時刻まで肩までの高さのビーチブレイクでサーフィンを楽しんだ。

コーミング・ザ・コースト:ビーチのゴミ拾い

トフィーノの沿岸警備隊事務所でのケルシーとコーリ。Photo: Malcolm Johnson

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テン場の前を舞う若いボールドイーグル。Photo: Malcolm Johnson

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テン場の裏の川でサーフィンのあと体を洗う。Photo: Malcolm Johnson

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重要な仕事、タコスの準備にあたるコーリ。Photo: Malcolm Johnson

翌日、僕らはグループに分かれて白い砂浜を別方向に歩いた。手にはパックとロープ、ゴミ袋。一歩進んで前に屈み、ゴミを拾って起き上がるという肉体作業を、繰り返し何時間かするとトランス状態に入った。その日は晴天でこの作業は魂にとってはよかったが、野生のビーチにどれだけ多くのゴミがあるかの現実には驚かされた。ロシアの建築ゴミ、マレーシアからのペットボトル、日本からの食品袋…。また近場からのゴミもたくさんあった。生協のオイル缶、トロ箱、ジュースボトル、そして何千ものペットボトルと空のビール缶。それらすべては天気と波によって粉々に砕かれる段階にある。また大きなものもあった。プロパンガスのタンク、波止場の一部、曲がった金属のかけら、そしてたくさんの色鮮やかな釣り用フロート。その日の終わり、僕らは巨大なゴミの山をキャンプ場まで持ち帰った。その大きな山は、僕らにはブイでボッチェゲームを楽しみ、ボックスワインを飲む資格があるのだということを納得させるだけの充実感を与えた。

コーミング・ザ・コースト:ビーチのゴミ拾い

フローレスの海岸線。Photo: Malcolm Johnson

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海の反対側から漂流してきたゴミ。Photo: Malcolm Johnson

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極悪な使い捨てペットボトル。Photo: Malcolm Johnson

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キャンプ地までの長い道を歩くチコ・アマト。Photo: Malcolm Johnson

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その日の清掃作業は18枚の工業用ゴミ袋を一杯にした。Photo: Malcolm Johnson

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あまり知られていないブイを使ったボッチェゲーム。Photo: Malcolm Johnson

翌朝、ゴミを仕分けして水際まで運んだ。沿岸警備隊のボートがゴミの荷をトフィーノに運ぶためにポイントを囲んでいた。街へ戻る途上、岩の小島集団を通り抜けながら、僕は沿岸の偉大な美しさとそれを保護する仕事がいかに価値あることかをふたたびかみしめた。僕らの住むこの場所は最悪の工業化を逃れたことは幸いだが、何もせずにその持続を願うことはできない。何かを壊すことは、それをふたたび元に戻すよりもはるかに簡単だ。とくにそれが僕らがその複雑さをまだ完全に理解できない、生きたエコシステムならば。

夕方ごろには沿岸警備隊が400キロのゴミをフローレスの海岸からトフィーノの船着き場へ引揚げる手伝いをしてくれた。そこでビクトリアのリサイクルセンターへ向かう軽トラックに乗せる。その日徒歩で家に向かいながら、足跡を残さないのではなく、来たときよりも少しでも美しくできればいいと思った。野生の場所で過ごし、僕らが地球に与える影響を目の当たりにするのは気がくじける。だが気がくじけることへの唯一の対応策は、僕らが住む場所の面倒を見る方向へと小さく動き出すことだとも学んできた。他の誰かをあてにすることはできない。自分で外へ出るしかない。サーファーでもクライマーでも釣り人であっても、また週末にちょっと散策するだけの人でも、自然のなかで時間を過ごせば過ごすほど、僕らの心と魂をいつくしんでくれる土地が、いま僕らのいつくしみをどれだけ必要としているかが明らかになるだろう。
—マルコルム・ジョンソン

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ゾディアックボートまでゴミを運搬するチコとウィージ。Photo: Malcolm Johnson

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このプロジェクトの成功はおもに水先案内をしてくれた我慢強い沿岸警備隊のおかげ。Photo: Malcolm Johnson

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クルーと400キロの宝物。Photo: Malcolm Johnson

マルコルム・ジョンソンはカナダの著作家で、パタゴニアの友人兼SBCサーフ・マガジンの編集者。マルコルムの過去のクリーネストラインへの投稿(英語)をお読みになりたい方は、「In Haida Gwaii」と「Backyard Adventure: On Lone Cone」をクリックするか、彼のTumblrのブログ、「The Shiny Sea and Malcolm R. Johnson」をご覧ください。

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