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深刻化する気候変動問題とわたしたちに出来ること

辻井 隆行  /  2018年12月5日  /  アクティビズム

わたしたちが営んでいる衣料品ビジネスは、他の多くの製造業と同じように、自然資源を使い、大量の水やエネルギーを注ぎ、温室効果ガスなどを排出しながら製品を造り、それらを販売することで利益を得ています。そういう意味では、事業そのものが環境汚染であり、パタゴニアもその例外ではありません。

FoE(Friends of the Earth)など複数の環境団体を創設した故デビッド・ブラウアー氏は、「死滅した地球ではビジネスは成り立たない」という言葉を残しました。もし、企業が利益追求だけを優先し、自社の環境に対する悪影響、とりわけ、深刻化する気候変動に関する問題と真剣に向き合わなければ、それはやがて自分たち自身にも及ぶことになり、ビジネスそのものを続けることが難しくなります。

だからこそ、パタゴニアは「ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」というミッションに真剣に向き合いながら、日々のビジネスを運営しています。気候変動問題を乗り越えるには、全ての企業が気候変動に対する自社の悪影響を最小限に抑えるための費用を「不可欠なコスト」として認識する必要があります。私たち自身は、1980年代から、原料調達や生地開発、縫製工場などのサプライチェーンも含めて、自社の悪影響を最小限に抑える取り組みを継続してきました。

しかし、気候変動問題が加速度的に深刻化する中で、自社の悪影響を最小限に抑えるという内向きの努力だけでは不十分なことは明らかです。昨今、過去に類を見ない規模の暴風雨、洪水や河川の氾濫、旱魃や山火事など、世界中の至るところで深刻な被害がもたらされています。実際に、ここ数年の間に、わたしたちの本社がある米国カリフォルニア州では過去と比較にならないほどの規模を持つ山火事が頻発し、日本では各地にある直営ストアや正規取扱店、さらには多くのカスタマーが、強大化する台風や集中豪雨の影響を受けてきました。

IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)は、10月8日に発表された特別報告書の中で、早ければ2030年には、産業革命前と比較した地球の平均気温上昇が1.5度に到達し、珊瑚礁の大部分が死滅するというショッキングな見解を示しました。気温上昇を1.5度以内に抑えようという2015年のパリ協定で掲げられた努力目標が、すでに極めて実現困難な現実であることがわかったのです。気候変動の影響を受けるのは、極地や海抜の低い島々などに暮らす一部の人々や動植物であるというのは、もはや過去の幻想であり、今や、ビジネスどころか、「死滅した地球では生命は存続できない」という言葉すら真実味を帯びつつあるように感じます。

こうした状況を鑑みれば、各企業が社外で起きている問題に対しても主体的に行動を起こすことがとても重要になることは明らかです。パタゴニア日本支社では、3つの軸でアクションを継続していく予定です。

一つ目は、気候変動に最も悪影響を及ぼす発電方法である石炭火力発電所の建設見直しに関するアクションです。2018年現在、日本では109基もの石炭火力発電所が稼動しており、さらに35基もの新設計画があります。計画中のものが全て稼動すれば、温室効果ガスの排出量は削減されるどころか、大幅に増加します。世界を見回しても、石炭火力発電という古い技術から世界中が撤退している中、新規建設を進める先進国はありません。私たちは、こうした状況を非常に危惧しており、複数のNPOと協力しながら、全国の直営店や自社メディアなどを活用してこの問題に対する認知を広め、建設を見直す活動を支援します。

二つ目は、自然エネルギーの普及支援です。残念ながら、利益だけを優先する一部の自然エネルギー事業が、森林や海岸線の破壊、地域の災害リスク増大といった問題を引き起こしているという現状があります。一方で、耕作放棄地を有機栽培の畑に再生しながら、その上の空間に、農作物が必要とする太陽光を取り入れるのに十分な隙間を空けて藤棚のように太陽光パネルを設置するソーラーシェアリングなどの事例も広がりつつあります。パタゴニアでは、地域の自立発展にも貢献している千葉県匝瑳市のソーラーシェアリング事業への投資を行うなど、より包括的な視点を持って自然エネルギーへの転換を継続的に支援します。

三つ目は、化石燃料の使用などによって大気中に放出されてしまった余剰な炭素を、もう一度、地球に固定するための努力です。私たち人間は、森の伐採や海の乱開発、化学肥料や農薬を過剰に使用する工業化された農業などによって、地球が本来持っていた「大気中の二酸化炭素を取り込む力」を奪ってきました。パタゴニアでは、食品部門であるプロビジョンズのビジネスを通じて有機農業や持続可能な漁業などを支援しつつ、ロデール財団やDr.ブロナー社などと共に環境再生型有機認証制度を広めることで、健全な土壌や海、森林を回復する努力を続けます。

パタゴニアは数ある企業のひとつに過ぎず、一社で出来ることは限られています。日本支社としても、他の企業や関係NPO、そしてカスタマーの皆さまと共に、相互に連携、協力をしながら、気候変動問題に対する効果的な対策を実現していくことを強く願っています。

パタゴニア日本支社社長
辻井 隆行

【個人としてできること】
再生可能エネルギーの電力会社を選ぶ:パワーシフトキャンペーン
化石燃料や原子力に投資していない銀行を選ぶ:COOL BANK AWARD

【企業、自治体、団体としてできること】
脱炭素化社会をめざすことを組織として表明する:気候変動イニシアティブ

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