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This is my Spring

加藤 直之  /  2018年12月11日  /  読み終えるまで4分  /  スノー

グランド・ジョラス北壁をバックに滑る加藤 直之。

富士山の初冠雪の季節になるとよく「もうすぐ冬本番ですね~」と満面の笑顔で言われる。「そうですねえ~」と返すものの、心の中では「いやあ、本番は春なんだよなあ」と呟いているものだ。パウダーライディングはもちろん大好きだし、スノーボードガイディング、そのほか冬でしか味わえないような景色や山行もすべてが好きだが、個人的な真意は冬とは脚を作り、身体を馴らし、モチベーションを上げる。つまり、心技体を調整するための準備期間と言っても過言ではない。そして来る春の本番にピークアウトできるようするために必要な季節なのだ。

スノーボーダーとして一番好きな季節は?と聞かれたら迷わず「春」と答えるだろう。決して暖かくなってくるから、日照が長くなるからではない。それは本当の山開きを意味するからだ。

春と言っても千差万別。日本の春もざらめ雪をはじめツアーが素晴らしいし、北米にはロングツアーやピークアッセントもありマウンテニアリングとしては至上だ。ヒマラヤだってプレモンスーンとは言っても標高に関係なく課題は無数にある。また辺境地にだってまだまだ見ぬ素晴らしい斜面が広がっている。ただ、スキーアルピニズムの神髄を垣間見ると言えば、ヨーロッパアルプスに勝るところはないだろう。

This is my Spring

ツールロンド南壁 ジェルバズッティ・クーロワールを登攀中。

フランス・シャモニを訪れる度に「日本とは時空が違うな」と考えさせられるのである。なにせ、言い方は失礼だがどう見ても普段運動していないだろうおじ様おば様たちがアックスの付いたバックパック、緩々のハーネスにアイススクリューを引っ下げてトラムに並んでいるのが日常茶飯事。その状況を作り出しているのは、アルピニズムの歴史そのものと同時に進化した便利すぎるそのアクセスそのものだ。優秀なマウンテンガイドたちの功績もあるが、登山・スキーが街または人々に根付いていると言ってもいい。そして、その対極にいざ上山すれば、とんでもない急峻な山肌に無数のトラックが着いているなんて事も日常茶飯事なのだ。とんでもない急峻な山肌というのは具体的にはどう見ても55度はあろうかというような氷壁などを指す。

最初にモンブラン山群を訪れたのはいつだったか。果てしない針峰群に目を奪われたのを覚えている。それから数回にわたり春の訪れを待って通うようになったのだ。行くたびに少しづつ現地の空気に慣れ、本当に少しづつ面白い登攀と滑降が出来るようになる。その滑降とはスティープなクーロワールおよび凄まじいエクスポージャーなフェイスであることが多い。不安定な岩雪氷を攀じ登ってピークまたはコルにたどり着き、目的のラインに至るまでも懸垂下降や登り返しを繰り返すこともある。

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そしてお目当ての滑降ラインはというとほぼ氷と化したガタガタの岩が露出した狭いラインであることが多い。

そんな山行を1日でやり遂げることができるのは世界でも類を見ない。辺境地にあるような冒険的アプローチはないけれど、場数を踏むには最も効率の良いところだと言えるし、ここから世界中の困難なラインを滑るスキーヤー、スノーボーダーを多く輩出しているのも事実だ。ここに通うのはライフワークになるだろう。

今年もまた冬がやってきた。いまはアメリカ・コロラド州で脚を作っている。帰国して、北海道で冬から春にやりたい山行もたくさんある。そして、4月になれば、またあの聖地へ渡り、条件が許される中で素晴らしい登攀・滑降を目指したいと思っている。

This is my Spring

夕焼けのリスカム。写真:黒田 誠

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