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地球が私たちの唯一の株主

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イヴォンの手紙を読む

走りゆく公園

ケイティ・ミラー  /  2017年4月19日  /  トレイルランニング

起きぬけのボーッとした状態で寝袋に入ったまま、 足元のジッパーだけを開けてキャンプのキッチンに ヨロヨロと歩み寄り、仲間と朝の挨拶を交わした。 肌寒かったけれど、荷物を軽くするためにウェアは 最小限しか持ってきていなかった。

私は寝袋から手を出して、温かいコーヒーを握った。すると東の霞のなかに、2頭の雄のバイソンが姿を見せた。高く生い茂った草のあいだをぶらつく彼らを、私たちは無言の驚嘆で見つめた。待ち受ける長距離のことを考えると、これは幸先のいいス タートに思えた。

私は驚嘆するのが大好きだ。

私たちはランナー、写真家、ローカルから成る チームで、メンバーはジャスティン・アングル、ウォーカー・ファーガソン、ボー・フレッドランド、フレド リック・マームセイター、私の5人。モンタナ州クッ ク・シティからイエローストーン国立公園の中心地オールド・フェイスフルまでの225キロメートルを5日間で走る、バックカントリートラバースをしていた。前日に出発した私たちは最初の48キロメートルを消化。「野生」の意味の世界共通の概念を象徴する、この野生の縮図のなかで展開する環境や政策にまつわるストーリーを、現場で直接体験することが目的だった。

1日目:今日のルートのスタートは、リパブリッ ク・パスまでの標高差900メートルの上りから。この峠のあるアブサロカ山脈は、アラスカとハワイを除く全米48州内に残されているなかで最も美しい、ホワイトバークパイン(アメリカシロゴヨウ)の森を誇る。ホワイトバークはキーストーン(中枢)種であり、イエローストーン圏に生息するグリズリーベアを含むさまざまな動物がその松の実を餌としている。この20年の温暖化によりマウンテンパインビートル(松食い虫)が大発生し、ロッキー山脈北部全域のホワイトバークが激減したが、アブサロカ山脈ではまだ健在だ。いまのところは。

リパブリック・パスに到達すると、脚下にはキャッシュ・クリークが広がっていた。かつて豊かなホワイトバークに囲まれたキャッシュ・クリークは、1988年の夏に猛威を振るったいくつかの山火事のひとつに焼かれた。何年も火災鎮火を繰り返したのち、公園の山火事管理は山火事の生態学的重要性を認識し、「レット・イット・バーン(自然にまかせて燃えつづけさせる)」として知られる方針を採用していた。あの乾燥した暑い夏、イエローストーン国立公園ではキャッシュ・クリークを含む793,000エーカー(約3,210平方キロメートル)以上が焼け、公園の広大な範囲が一見モノトーンの不毛の地と化した。

ホワイトバークは再生に数十年を要する。私が両腕で抱えられる程度の幹でも樹齢500~700年に達することもある。大火から30年が過ぎたいま、この谷には私の背丈をかろうじて越えるくらいの新たなホワイトバークがまばらに立っている。私たち はラマー・リバーとの合流点まで谷を下りつづけ、そこから南に方向転換して、初日のキャンプ地となる川上へと進んだ。

2日目:ミスト・パスを越えてペリカン・バレーまでの40キロメートルを走り出しながら、朝見た2頭 のバイソンに出会うだろうかと思った。大イエローストーン圏にはバイソンを獲物とする捕食動物はほとんどいないため、バイソンが恐れるものは少ない。オオカミでさえ子牛や老牛、または怪我をした牛しか狙わない。イエローストーンはバイソンの王国としてふさわしい場所だ。1800年代の無差別狩猟と密猟でほぼ全滅にまで追いやられたものの、野生生物保護における初の連邦法となったレイシー法の議会通過により、バイソンは1894年にようやく法的保護を受けた。

当時バイソンの生息数は推定23頭に過ぎなかったが、保護と繁殖、および再導入に多大な努力が注がれたことでその数は跳ね返り、現在では公園内で繁栄を保っている。谷を数キロ上ったところで例の2頭のバイソンを見かけ、私はこの素晴らしい必死の保護活動の成功に感謝の念を抱いた。広大なペリカン・バレーを走り進み、暑く乾燥した箇所を奮闘して乗り切ると、2日目のキャンプ地であるイエローストーン・レイクに到着した。

3日目:米本土48州の最奥地であるソロフェアの 外れを、踊るように快調に進んだ。朝の空気は澄み、トレイルは平らで、景色は抜群だった。私たちはイエローストーン・レイクの縁をなぞった。海抜2,100メートル以上にある北米大陸最大の湖で、面積は約350平方キロメートル。カットスロートトラウトの重要な生息地でもあり、イエローストーンに生息するそれ以外のマスはすべて外来種のため、「カットスロート」と 「原生種」はここでは同意語だ。最も侵略的な種のひとつであるレイクトラウトは、イエローストーン・レイクでじつによく繁殖してきた。毎夏アラスカ級の巨大な漁船がレイクトラウトを刺し網で捕獲しているが、 2014年だけでも277,000匹以上の侵略種が引き上 げられた。寄生虫性の旋回病、生息地の破壊、長期にわたる旱魃など、カットスロートに迫る脅威は他にもある。公園内の少なくとも42種の生物の食料源となっているカットスロートの急速な減少は、みずからだけでなく、他種をも巻き込む絶滅への下り坂を示している。

東側の湖畔を48キロメートル走り、サウス・アームの端のキャンプ地に着いた私たちは、カヌーで荷物を運んで来てくれていたポーターと合流した。寝袋に潜り込み、テントの扉から外を見つめると、感謝の気持ちでいっぱいになった。計画は思いのほかうまく進み、天気はもちこたえ、体の故障もない。バックカントリーが野生に満ちた滋養を与えてくれていた。

4日目:初日からずっとグリズリーベアには目を光らせてきたが、この日はとくにグリズリーの多い場所を走り、私たちはさらに警戒心を高めた。クマ除けスプレーを携帯し、グループで固まって走り、しきりに大声やかけ声を上げたり、手を叩いたりした。けれどもクマの気配はどこにもなかった。

統計では、人はグリズリーベアよりも犬やハチに殺される可能性の方がはるかに高い。というのも、グリズリーベアはほとんどの場合、人間とは何の関わりももちたくないからだ。驚かせたり動揺させたりせずに健全な距離を保てば、クマに攻撃される確率はかなり低い。それでも、イエローストーンではクマと人間のあいだにつねに不合理な関係がある。1970年代には、訪れる人びとが日常的に車に接近するクマに手で餌を与えていた。またクマはしばしばゴミ捨て場にも姿を現し、その写真を撮るために何百人もの観光客が集まった。クマと人間との衝突では往々にしてクマが殺され、公園の領域外では狩猟がつづけられた。1975年時点ではグリズリーベアの生息数は推計わずか136頭に減少し、絶滅危惧種保護法下の「絶滅危惧種」に分類された。狩猟期間は撤廃され、人間とクマの衝突を減らすために管理政策と一般教育が導入された。生息数は以来現在の推定717頭にまで回復した。

ところがいま、グリズリーベアを絶滅危惧種のリストから外そうという提言が再浮上し、科学者や活動家や環境保護論者のあいだに憤激を巻き起こしている。気候変動によりグリズリーの主食源であるホワイトバークパインが激減する一方、急増殖する侵略種のレイクトラウトにより原生種のカットスロートトラウト(グリズリーのもう1つの重要な食料源)の産卵は推定90パーセントも減少している。またイエローストーンに生息するグリズリーベアには遺伝的多様性も必要であり、その確保には北に隣接するグリズリー群との交配が欠かせない。グリズリーが保護リストから外された場合に許可される狩猟や「管理」により、この広い行動域は脅かされてしまう。イエローストーンのグリズリーは北米で繁殖が最も遅い陸上哺乳類の1種で、リスト除外でその個体数がわずかでも減少すると、種全体としての存続が危ぶまれかねない。

マウント・シェリダンを900メートルほど上ると、この日の走行予定距離56キロメートルの約37キロ地点で、右の大腿四頭筋がこむら返りを起こした。ジャスティンがクマ除けスプレーの缶でマッサージしてくれると、あまりの痛さに涙が顔を伝った。だが一時的に痛みが和らいだのでさらになんとか19キロ走り、そのあとショショーニ・レイクの火山岩の砂利に覆われた湖畔にへたり込んだ。最初に水に飛び込んだのは、いつもながら元気なウォーカーだ。「ここぞ最高のキャンプかも!」と言いながら。

5日目:目が覚めたとき、私は走れるかどうか自信がなかった。体のあちこちが痛み、足をひきずらずには歩けなかった。でもここまで来て断念することは、考えられなかった。残すは32キロメートルだけで、しかもいよいよ間欠泉にたどり着く日だ。約16キロ走った私たちは、生温い沼地を通り抜けてショショーニ・ガイザー・ベースンに入った。1キロ半におよぶ、この世のものとは思えないバックカントリーの風景。地面から噴出する煮えたぎる温泉、硫黄の臭い、青緑色の池、温かい蒸気、それほど遠くない足元のどこかで撹拌するマグマの存在には、超現実的な何かがあった。驚嘆、そしてまた驚嘆の 連続。

13キロのスムーズなシングルトラックを走ったあと──そして5日間でさまざまな微気候と生態系を通り抜け、環境にまつわる数々のストーリーを体験したあと──私たちは最後の丘を駆け下りた。オールド・フェイスフル・ガイザーの前に立つ数百人の群衆のなかに小走りで向かうと、オールド・フェイスフルは熱水と蒸気を30メートル以上も宙に吹き上げはじめた。数分後に噴出がおさまると、私たちはしぶしぶと通常の人間社会に戻りはじめた。だがその瞬間、私はこれら野生地の決定的な重要性を感じた。雨に遭い、風の歌を聞き、星空の下で眠り、野生動物の存在に鳥肌が立つ場所。混沌と交通渋滞と街の灯りのなかで、私たちはつねにこの野生の小さな断片を持ち歩く必要がある。自分たちの選択が、訪れるだけの遥か遠くの地に、どんな影響を与えるのかを考えるために。ランニン グやハイキングやクライミングのように、現代人の生活の因果関係もまた、一歩一歩厳密に吟味されなければならないのだ。

このストーリーの初出はパタゴニアの2017年Springカタログです。

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