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地球が私たちの唯一の株主

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イヴォンの手紙を読む

グラウンド・コントロール

ジョニー・ゴール  /  2021年5月18日  /  スノー

アレックス・ヨーダーがスノーボードのキャリアで10年を迎える頃、彼は「恐れ」を感じるようになった。ワイオミング州ジャクソンの険しい山で育ったアレックスは彼が崇拝しているスノーボーダーの足跡を文字通り頻繁に辿り、より大きなジャンプとよりテクニカルなラインを限りなく追求していた。バックカントリーにおける成功の方程式があるとしたら、彼はそれをコツコツと探求していたのだ。つまりそれは毎年、取り組むことの難易度を増し、その難易度をさらに高めていくことだった。

「大きなジャンプや命がけのラインを求めてバックカントリーに入る前夜、恐怖と不安でほとんど眠れなかった」と彼は振り返る。「僕がやっていたことはおののくべきことだった。僕にはそれができる能力があることは解っていたが、適切な心構えでなかったために怪我をしてしまった」

アレックスはバックカントリーの奥深く、24キロ入った場所で24メートルのギャップをジャンプするトリックを試み、脳震盪をおこした。「一緒にいた仲間は、病院に行く必要があるかどうかではなく、そのジャンプを再び試みることができるかどうかを問いかけてきた。その時、何か予期せぬ事が起こったとき、自分には多くの選択肢がないことに気がついた。そして、もう無理だと思った」

北海道でのスノーボード旅の途中、他のライダーグループにファーストトラックを取られてしまったとき、心理的なストレスが頂点に達した。

「僕は彼らにファースト・トラックを取られることにとてもストレスを感じていた」と振り返る。「でも僕の新しい日本の友人たちはこのグループと喜びを共有し、歓声をあげていた。その瞬間に気づいた。『僕は一体どうなってしまったんだ。ツルツルの板を足につけて山を滑ることを文字通り自分の人生の中心に据えながら、いつも攻撃的で気を揉んで恐れている』と。僕のスノーボードのやり方は自分の魂と合致していないことに気がついたんだ」

そこで彼は自身を見直しはじめた。アレックスは日本のスノーボードブランドのGENTEMSTICKのチームに加わり、スコットランドトルコでライディングにおける文化や自然観を探求するスノーボードのドキュメンタリー映画を制作しはじめた。他のライダーたちがスノーボードの技術的な限界に挑戦する一方で、アレックスはコミュニティや伝統を探求することにこのスポーツを利用したのだ。その結果、彼はスタイリッシュなターンとよりスローで瞑想的なスノーストーリーへのアプローチの二つの軸で自己を確立しアイコンとなった。

「あの一瞬がすべてを変えたんだ」と彼は言う。「70代になっても今のようなライディングができるし、再び喜びを感じている。アドレナリンよりもボードが山とふれあう方法により敏感になることを通してこのスポーツを経験しているんだ」

スノーボードで新たな道を求めることにアレックスを導いたこの思想の変化は、また同時に彼を新たな冒険となるオーバービューコーヒーの起業へと導いた。同社はリジェネラティブ・オーガニック農業の原理に基づき、人間がより自然で調和のとれた方法で地球と関わり合うことに焦点を当てた、倫理的なコーヒービジネスを展開している。オーバービューは、作物を育てるために自然に抗うのではなく、自然に存在するものと協働し、土壌の健康や生物多様性、コミュニティの安定性への長期的なアプローチを通した環境管理を優先する農場からコーヒーを調達している。それは多くの意味において農業と土地管理の伝統的な方法への回帰でもある。

「僕はリジェネラティブという言葉をパタゴニアのスタッフとフライフィッシングへ出かけた時にはじめて聞いた。そこには創業者のイヴォン・シュイナードが偶然いて、誰もがビジネスや製品のことについて彼と話したがっていたが、イヴォンは『ああ、でも僕らはすでに多くのモノを作りすぎている』と一蹴した」とアレックスは笑みを浮かべた。「だから1960年代に彼がやった『飽くなき冒険者』の旅についての質問してみたら、寝るために夜中に教会に忍び込んだこと、サーフボードにワックスをかけるためのロウソクを盗んだことなど、素晴らしいストーリーを語ってくれた。イヴォンは僕より30センチほど背が低いから、僕の背中に鼻を押しつけながら、腕を掴んでキャスティングを教えてくれた」

しかし、この旅でアレックスはもうひとつの重要な質問をした。それは、自分を悲観主義者だと名乗る彼が人生とビジネスを環境危機のために捧げてきたのなら、それに解決策があると信じているのか?という質問だった。イヴォンはその答えを土壌に見いだしており、それはアレックスが土壌の再生に役立つ可能性のあるビジネスをはじめるインスピレーションとなったのだった。

私がコーヒービジネスについて書く資格がまったくない人間だとしたら(私の定番はダンキンドーナツのアイスコーヒー)、アレックスはそれを経営する資格がまったくない人間かもしれない。なぜなら、彼は昨年オーバービューをはじめるまでコーヒーを飲んでいなかったからだ。しかし、ポートランドにあるオーバービューのコーヒーを仕上げる焙煎機で6杯目のエスプレッソを注いでくれたときには、私はこのことを理解することができた。「世界を変えることを目的とするのなら、人がすでに関心があることからはじめよう」ということを。アレックスと共同創業者たちにとって、オーバービューは世界の成人人口の半分以上が日常的に行っている習慣を気候危機に対する解決策へと変えようとするものだった。

「朝起きて『とうもろこしを食べるのが待ち遠しい』と言う人はいないだろう」とアレックスが言ったとき、私は日陰で育ったオーガニックのエチオピア・ブレンドを鼻に吸い込んでいた。「人がコーヒーに感情的なつながりを持っていることは重要なんだ。なぜなら気候が変わりつづけるにつれて、コーヒーを育てられなくなってしまうかもしれないからね」

コーヒーは赤道付近の特定の緯度、「コーヒーベルト」と呼ばれる場所で栽培される。地球が温暖化するに従い、コーヒーが育つ山岳亜熱帯地域は縮小してしまう。その状況はあまりにも緊迫しており、現行のコーヒー農場の半分が2050年までにコーヒーを栽培できなくなるかもしれないとまで言われている。それは環境と人間の双方にとって緊急事態の兆候だ。コーヒーのような農作物を何世代にもわたって生活の糧としているコミュニティは、その生業と故郷から「気候によって追放」されつつあるのだ。

「従来のコーヒー農場ではコーヒーを育てる場所を作るために原生林を伐採していたが、コーヒーの生育には日陰が必要であり、その問題を解決するためには人工的な生育環境を作らなければならない。リジェネラティブ農業は、そのシステムに関わるすべての生命体の有用性を考慮することによって、複数の問題を一度に解決することができる」とアレックスは語る。「菌類やミミズや鳥など、そこでどんな動物がフンを落とすのか、雨の降り方はどんなものかについて考えるんだ」

宇宙飛行士がはじめて宇宙から地球を見たときに経験する認知的な意識の変化にちなんで名付けられた「オーバービュー」は、まさに北海道でのアレックスのひらめきの瞬間を彷彿とさせる。

「彼らはそれを『虚空にぶらさがる生命の球』と呼ぶんだ」とアレックスは説明する。「それはこの計り知れない宇宙で生命が存在することを僕たちが知る唯一の場所だ。それは信じ難いことで、1960年代のアポロ計画で宇宙飛行士がこの見解を持ち帰ったことで、環境運動がはじまった。多くの人は、活動家というと街頭を行進したり自分の意見を示すプラカードを掲げることだと思うかもしれない。でも僕はオーバービューを機能的なアクティビズムのひとつの形であると捉えている。他の会社が生産する製品を、地球に危害を加えるのではなく、代わりに恩恵を与える方法で生産しているのだから」

誰もが宇宙に浮かぶ地球を見ることはできないが、ほとんどの人がコーヒーを飲む(地球上の半分以上の大人が毎日飲んでいる)。アレックスはただ、私たちのマグカップに入っている飲み物が何なのかについて意識を高めることで、コーヒーを飲む人たちが農業改革の活発なステークホルダーになることを願っているのだ。それはより静かで実践的な環境主義であり、アレックスのスノーボードへのユニークなアプローチと似ている。

「僕は、業界で称賛されているものを参考にして作った箱の中に収まろうとしていた。そこから抜け出すには、いくつかのハードな苦いを経験しなければならなかった。そして、僕がそれを諦めるところまで達したことで、スノーボードが僕にとって何を意味するかについて自分の視野を広げることができ、そのときはじめて僕は本当の居場所を見つけたんだ」

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