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オースティン・シアダック & リシェル・キンブル&オースティン・シアダック  /  2021年9月29日  /  クライミング, コミュニティ

クライミングが彼らにふさわしいことを見いだす。

ドリュー・ハルシーは手にした携帯電話のGoogle検索で、「太った人にクライミングはできるか」と入れてみる。この疑問は、先週彼が妻のサラと映画『フリーソロ』を見て以来、こだわっていたことである。ドリューはこのスポーツに完全に魅了されてしまった。しかしこの映画でも、そのあと彼が見た多くのYouTubeの動画でも、彼と同じような人が登っている様子は見られなかった。テネシー州ナッシュビル近郊にあるクライミングジム〈ザ・クラッグ〉の外にとめた車のなかで、彼は不安に感じていた。挑戦したいという彼の熱望は、体の大きさによって砕かれてしまうのではないか、と。Googleは役に立たなかった。そしていま、彼はジム内の受付カウンターに立ち、そこにいるスタッフに同じ質問をする。「僕に、これ、できますか?その、つまり、太った人間にもできるか、という意味で」

それは2019年のことだった。その2年後、ドリューとサラは、ケンタッキー州レッド・リバー・ゴージの中心部を通るくねくね道を、「ファニー」と名づけた愛車(水色のストライプが入った白の1993年製ダッジ・ラムB250)で飛ばしていた。岩壁のラインがぼんやりと見えはじめ、車のフロントガラスが朝露で濡れる。ドリューははじめて5.8のルート「ザ・ビーズ・ビジネス」のリードに挑み、初のチムニーである5.7の「ドラゴンズ・マウス」では、その名にふさわしい怪物との果敢な奮闘を見せた。サラは前回の旅で完敗したスラブを登りきり、笑顔でチェーンにクリップする。岩場では他のグループと情報を交換し、完登した古い課題に代わる新しい課題に目をつけると、車に戻ってその1日をビールで締めくくる。

彼らはクライマーだ。

その人が誰で、どういう人間であるかということを表すものは不変のものではなく、私たち自身が作り上げるものである。「クライマー」というと、どうしてもある種の体型と優れた能力のイメージが切りはなせない。けれどもこの作り上げられたイメージが多くの人にとって障壁となり、向き不向きの先入観を強めてしまう。

あなたがクライミングについてほとんど何も知らない、と想像してみてほしい。そして、スポーツ用品店に足を踏み入れる。超健康体のアスリートのポスターがそこここに貼られ、並んでいる服はどれも自分のものより5サイズ以上小さく、マネキンですら鍛えられた腹筋の持ち主。

「『私に合うハーネスはどのサイズですか?』なんて、聞きにくいものです」と、サラは自身の経験から語る。靴のサイズが27センチの彼女は、探すのは男性用の売り場。ドリューにとっては、自称「がっちりした体格」に合うサイズの服を選ぶのが大変なこともわかっている。パタゴニアを含む多くのアウトドアブランドで、彼の選択肢は限られているからだ。「そのとき私たちが見たもののなかには、私たちがクライミングで使えるものは、まったくありませんでした」と、サラは振りかえる。そのような状況にひるむこともなく、彼らは『Sport Climbing : From Topropeto Redpoint』や『Mountaineering : The Freedomofthe Hills』などを読み、ホームセンターで角材を1本、アイフックを数個、チェーンを2本購入。リビングルームのテレビ台にバンジーコードで手作りのアンカーを設置し、毎晩アンカーの回収の練習をした。やがて自信をつけた彼らは、〈ザ・クラッグ〉を訪れる人たちと過ごす時間も増えるようになった。知り合いがやがて友人になり、そうした友人が、ジムから岩場へと安全に移行する技術を教えてくれた。

ジムの外でクライミングをした最初の何回かのある日、ドリューはトップロープで登ったことのある人ならほぼ誰もが経験する事態に陥った。動けなくなってしまったのだ。次のムーブは不可能に思え、次のボルトは遠すぎて手が届かない。どうやってもそれ以上の高さに進めなかった。恥ずかしさとともに落胆し、サラに降ろしてもらった。だがその過程で新品のクイックドローを外し忘れていた。

荷物をまとめて家に帰る途中、ドリューはInstagramでメッセージを受け取った。彼らのクイックドローを回収してくれたジムの知り合いが、それを届けたいというのだ。ドリューとサラは驚きとともに感謝の念に包まれた。

「私たちはずっと、仲間を切に探し求めていたんです」とサラは言う。彼らはボーリングやランニングやウェイトリフティング、そして幼少時に多くの時間を過ごした教会など、いろいろと試したものの、どこもしっくりこなかった。しかしクライミングには違う感覚があった。誰もが自分自身でいるためにそこに集い、同じように自分自身でいようと集まってくる他の人たちを寛容に受け入れる人たちだった。「クライミングでは、ただそこにいるだけでいいんです」とサラ。「実際のところ大切なのはクライミングだけじゃなく」とドリューも加える。「それを取り巻く環境です。クライミングの合間の楽しい時間が大切なんです」

ドリューはソーシャルワーカー、サラはメンタルヘルス・カウンセラーとして働くが、それらはやりがいがあると同時に、精神的な消耗が激しい職業でもある。困窮している人を助け、受け入れるのはむずかしい仕事だ。ドリューにとって、大きな不安や困難に包まれたときの癒しは食べ物である。サラは大学生のときに体重を減らすようにと医師に言われたが、実質的なアドバイスは何ももらえなかったため、食べ物が禁止されている図書館でできるだけ過ごすように勉強の時間割を変えたと言う。そんな場面を切る抜けるうえで、クライミングは2人にとって健全なストレスの発散方法となってきた。「私たちの体型が劇的に変わったわけではありません。でも精神的にも身体的にも健康になりました」と、サラは言う。

「それに日常生活でも、より困難なことをこなせるようになりました」ドリューがクライミングをはじめたばかりのころの思い出で気に入っているのは、レッド・リバー・ゴージでクライマーのたまり場となっているピザ屋〈ミゲルズ〉での出来事。あるルートについてリードできるかどうかを話していたドリューの声を耳にした経験豊かなクライマーが、発破をかけてくれたのだ。「彼は僕が5.4のルートに挑戦することを、まるで彼自身が5.12に挑むかのように興奮していました。

そのおかげで自分にとても自信がもてたんです」ドリューとサラが見つけ、いまではその成長に貢献する集まりは、デジタル世界にも広がっている。ドリューが失敗や成功を収めた短い動画を共有することからはじまったInstagramは、互いを励まし合う場として、急速に変わっていった。

「ある人がオープンに自己の弱点について語ると、他の人も自己の経験を共有する勇気をもつことができます」と、サラは言う。影響力の強いクライマーが体のイメージや精神の健康状態について話し合う様子を見て、他の人も同じだと、彼女は気づきはじめた。ある女性がしてくれた話を、誇らしげに語ってみせる。「その女性は、クライミングをするような体型じゃないとご主人に言われたそうですが、私の動画を見てこう言ったんです。『私はやるわ、何と言われようと!』って」

彼らはハーネスの買い方やクライミングの基礎の学び方など、簡単なことについて意見を求められる。「ドリューとサラのオンラインでの存在はたくさんの扉を開け、いままで考えもしなかったような挑戦に取り組みやすくしてくれています」と言うのは、〈ザ・クラッグ〉のマネージャーであり、彼らの友人でもあるジョーダン・ホリー。「私たちのクライミングの世界には、それが必要です。私たちがクライマーに抱く因襲を打破する人が必要なんです」

サラとドリューにはいまだに居心地の悪いときがある。とくにロープやクイックドローを満載したバンで岩場に到着し、彼らがクライマーであることを聞いて驚く人の反応を目にするときだ。それでも2人は、よりハードに登ることや、意味ありげな目で見られることへの絶え間ないプレッシャーを感じることなく、ただ楽しむだけのクライマーでかまわないということを、他の人たちに伝える気が満々だ。サラは言う。「私たちがクライミングをはじめたころにはなかった、その声となりたいんです」

私たちは、この物語の写真が撮影された地域の伝統的な守り主であるチェロキー族、チカソー族、ショーニー族の人びとに感謝を捧げます。

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