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2025年度のWork in Progress Reportでは、私たちの唯一の株主である地球への負担を軽減するために行っている、新しくて楽しい、そしてちょっと変わった方法をすべてお伝えします。

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地球が私たちの唯一の株主

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事業の繁栄を大きく抑えてでも地球の繁栄を望むのならば、私たち全員が今手にしているリソースでできることを行う必要があります。これが私たちにできることです。

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私たちの英雄

アヤナ・エリザベス・ジョンソン博士  /  2023年7月12日  /  アクティビズム, フットプリント

海への私たちの扱いを正せば、海は私たちの気候を癒す手助けをしてくれる。

皆さんは、砂に足を埋め、はじめて海を見たときのことを覚えていますか。その海が、どんなに広く青かったかを。どれほど素晴らしく魅力的だったかを。まだ子どもだった私は、波の魔法からすぐに砂と貝殻へ目移りしてしまいました。当時の私にとって海は……理解するには少々大きすぎたのです。両親に泳ぎ方を習ったときの教訓は、「海には決して背を向けない」というものでした。油断すれば叩きつけられたり、あるいはもっと悪い事態になりかねないから、と。大人になり、海洋生物学者として気候解決策の研究に重点的に取り組むようになると、海の力に対する私の敬意は深まるばかりでした。でも同時に、懸念も高まりました。

今日現在までに、海洋環境の66パーセントが人間の行為によって変貌しました。海は石油流出、農業、工場、プラスチックなどによって汚染され、沿岸生態系はエビの養殖やリゾート開発のためにブルドーザーで均されています。乱獲は魚の個体群を激減させ、また深海は採鉱のために掘り起こされる危機に瀕しています。海水は温度と酸性度を増し、それが魚を両極へと追いやり、サンゴ礁を劣化させ、地域社会を破壊するハリケーンを激化させています。さらにゆっくりと着実に迫る大惨事が海面上昇です。

これらは書いている私にも、そして読む人にとっても、思わず嘆息が漏れてしまうほど威圧感のある現実です。私たちがそれらすべてに注意を払い、食い止める努力をしなければならないことに間違いはありません。でも化石燃料からの脱却、正当に調達される再生可能エネルギーの拡大、何トンもの炭素隔離、沿岸経済の支援、持続可能な食品システムの創造などのために、私たちには海が与えてくれる解決策を理解する必要もあります。実際、海を利用したあらゆる解決策を組み合わせると、世界の気温上昇を摂氏1.5度に抑えるために必要な、温室効果ガス排出量の削減目標の21パーセントが可能になると言われています。海を被害者、あるいは脅威としてのみ見ることから、海を英雄として正しく認識しなおすことに、私たちは明らかに遅れをとっているのです。

数多に広がる解決策

私たちは、海の癒しの力に背を向けてはなりません。私たちの多くは、海が心を癒してくれることをよく知っています。乱世がつづくいまはとくに、それをもっと利用するべきかもしれません。でも、私たちは気候の安定に役立つ海の能力についてはあまり理解していません。海はこれまで温室効果ガスに閉じ込められた過剰熱の90パーセント以上を吸収してきました。このことがなければ大気は現在よりも摂氏36度ほど熱くなっていたでしょう。海はまた、化石燃料の燃焼によって放出された大気中の二酸化炭素の約30パーセントを吸収してきました。でもその結果、水温が摂氏0.88度、酸性度は30パーセント上昇し、海洋生物にとって生息しづらい場所になってしまいました。

汚染と大気の温暖化を軽減するとともに、海は再生可能な洋上発電を生み出す素晴らしい潜在能力を秘めています。いま現在は風力が主流ですが、ゆくゆくは波や潮なども利用されることになるでしょう。例として、米国のエネルギー需要の3分の1は洋上風力発電で賄うことのできる可能性があります。30パーセント以上ですよ。この代替エネルギーは汚染を引き起こす化石燃料から迅速に移行し、石油流出による経済的および生態的な破壊を撲滅するための重要な要素となります。

でも同時に、技術的な方法だけを頼りにする傾向は抑えなければなりません。自然や光合成はすぐに活用できる解決策の大きな一環です。沿岸の生態系は防波堤などの建造物よりもたいてい安価で効果的に海岸線を保護します。また食料の確保を強化し、沿岸地域の経済を支援します。世界の海洋経済は控えめに見積もっても1.5兆ドルの価値があり、これは2030年までに2倍になり、3,100万のフルタイム雇用を支えると予測されています。そのすべてについてもう少しお話しましょう。

漁獲量を減らしてより多くの場所を守る

完全に保護されている海洋が全体の3パーセントに満たないという事実ほど、海がいかに尊重されていないかを端的に示すものはありません。それは痛ましいだけでなく、生態系の完全性と生物多様性の維持に必要なのは30〜50パーセントの保護という、科学者が推奨する数字からはほど遠いものです。

陸上の国立公園と同様に、海洋保護区(MPA)は人間の有害な活動から海の生き物が回復するための、安全な避難場所となります。とくにより広域で規制が厳しい海洋特別保護区(すべての漁獲が禁止されているMPA)では、保護区内だけでなく境界線の外にも多くの利益をもたらします。最近のメタ分析の結果は:

MPAの設定を普及させることは気候変動を減速させ、気候変動にともなって予測される窮状(食料安全保障の低下や海面の上昇など)の一部を緩和し、生物多様性の喪失を抑え、地球の生命維持装置を支える重要な生態学的過程の保護を助け、さらに温室効果ガスの排出が制御されたのちの自然の回復の見通しを向上させる可能性のある、コスト効率の高い方法である。

ここに掲げられた5つの勝利を、ぜひ目にしたいものです。

そこで3つの例が思い浮かびます。南カリフォルニアでは出漁区域を35パーセント縮小したMPAで、その6年後に周辺海域の総漁獲量が225パーセント上昇しました。MPAには壁がないため、境界内で魚の個体数が回復すると、そこから泳ぎ出す幼魚や成魚の「波及効果」により、境界外の漁獲量も増加します。

メキシコのバハ・カリフォルニアでは気候変動による酸素欠乏がアワビの大量死を引き起こしましたが、海洋特別保護区のより健康な生態系内ではアワビの個体数がより早く回復しました。

またオーストラリアのグレート・バリア・リーフでの調査では、高水温によるストレスに起因して白化したサンゴ礁が保護区内ではより早く回復したことを示しています。MPAは変化する海洋状況に対する海洋生物種や生態系の回復力を強化します。このことは気候危機の現状を考慮すると極めて重要です。

海洋特別保護区が唯一の解決策というわけではなく、それだけでは十分でもありません。乱獲や生息地破壊や汚染に終止符を打ち、もちろん気候変動にも対処する必要があります。また、管理権の地元先住民族への返還や政府と先住民族の自治体による共同管理も、海洋保護の重要な鍵となり得ます。

そして、海の3分の2を占める広大な公海があります。沿岸からも人間が暮らす場所からもはるか遠くにある、誰も「所有」しないこうした海域は、ほとんど管理されていない状態にあります。公海漁獲の禁止は非常に重要で、すでに実践されているべき対策です。今年、国連はその目標を成し遂げる公海条約の通過に近づきましたが、可決は実現しませんでした。この努力は今後も継続されなければなりません。

海の30パーセント以上の保護と公海漁獲の禁止が極端すぎると思う人は、魚の個体数の約94パーセントが乱獲、または最大持続漁獲量に達するまで捕獲されている、という現実を考慮してみてください。レーダー、ソナー、ヘリコプター、偵察用飛行機など戦争のために開発された技術が、残存している魚を見つけて捕獲するために使われています。天然の魚は乱獲のせいで子孫を残すことに追いつきません。それでも約30億人の人間がたんぱく質の主要供給源として魚介類に頼っています。釣る魚がいなければ、釣りの仕方を教えても意味がありません。

ラッパーのビギー・スモールズは貧困の象徴として、「夕飯にイワシを食わなきゃならなかったことを忘れるな」と歌いました。イワシは、いままさに私たちが食べるべき魚です。マグロのように個体数が50パーセント以上(クロマグロに関しては2016年に97パーセント)激減した最上位捕食魚ではなく、この小型ながらもオメガ3を豊富に含む多産な魚を食べるのです。それは美味しいだけでなく、さらに良いことがあります。

海を再生させる養殖

厳しく規制された広海域の保護と同時に、漁獲に代わる養殖も実践しましょう。ここで言うのは水を汚染し、何トンもの餌を要する工業化されたサーモン養殖のことではありません。食料安全保障と持続可能性のための未来には、海岸線に海藻と貝類の養殖場が点在する構図が理想です。環境再生型養殖では、水中に垂らしたロープにムール貝が、海底の網の中に牡蠣やアサリが、そしてそれらすべてのあいだに昆布がしげります。

海上養殖における先駆者のブレン・スミスがパタゴニアプロビジョンズの映画『The Ocean Solution(海の解決策)』で説明するように、環境再生型養殖は肥料も淡水も餌も必要とせずに行われます。光合成と貝の構造を利用することでそれは養殖場は何トンもの炭素を吸収し、無数の野生生物の生息地を生み出して、世界中で最大5,000万もの雇用機会を創出する気候解決策となります。1エーカー(約4,047平方メートル)の海はほんの5か月ほどで最大10トンの海藻と25万個体の貝類を生産することができます。

海藻は人間の食物として栄養価が非常に高いだけでなく、特定の海藻を家畜の飼料に配合すると、メタン(強力な温室効果ガスの一種)の排出量を50パーセントも削減することができます。海藻はバイオプラスチックやバイオ燃料にも使用可能という真の万能素材でもあります。

沿岸生態系の修復

海藻の魅力からズームアウトして全体を見てみると、沿岸生態系はその重要性が十分に評価されていません。これらの生態系をかき乱すことにより、進行中の炭素隔離が阻害され、すでに貯留された炭素が再放出されます。毎年、劣化または破壊された沿岸生態系から最大10億トンの二酸化炭素が放出され、そのうえ強力な温室効果ガスであるメタンも大量に放出されます。炭素を「吸収」するはずの生態系が「放出」を重ねるというこの驚くべき現象は、私たちがバルブを逆にひねっているからです。

東南アジアでは広大なマングローブ林が小エビ養殖のために整地されました。2004年の津波で最も深刻な被害を受けたのはマングローブが取り除かれた地域の住民でした。致命的な洪水に対する自然の防壁がなかったからです。ミシシッピ・デルタも同様で、2005年に発生したハリケーン「カトリーナ」以前に、ルイジアナ州南部ではすでに4,900平方キロメートルの湿地が消失し、嵐の勢力を緩和するのに十分な湿地が残っていませんでした。またニューヨーク市はかつて40平方キロメートル以上の湿地に囲まれ、そこには牡蠣が豊富に生息していました。でもこの沿岸都市は前世紀までに85パーセント近くの沿岸湿地帯を失い、いまでは大部分が保護されておらず、野生の牡蠣礁は存在しません。それでも残されたわずかな湿地帯は、2012年のスーパーストーム「サンディ」で1.4億ドルに上ったかもしれないという洪水の被害を防ぎました。貧困層や労働者階級の人びと、とくに有色人種や借家住まいの人びとは不釣り合いにも最も大きな嵐の被害を受け、10年後のいまとなってもまだその傷跡から立ち直っていません。

コミュニティが緑色の基礎構造(自然)の代わりに灰色の基礎構造(コンクリート)を選択すると、そこには桁外れな費用がかかります。沿岸生態系は往々にして洪水や嵐に対する防護を防波堤よりも優れた効果かつ低予算で提供します。沿岸生態系を傷つけず、修復すれば、それが私たちを守ってくれるのです。

危険な場所からの移動

地球温暖化にともなう水温の上昇のせいで勢力を増す非常に強力な嵐は、いまではよくある現象となっています。より激しい風雨や勢力に加え、気候変動に起因して、嵐の時期は長くなっています。2022年、ハリケーン「フィオナ」と「イアン」はカリブ海地域に大打撃を与え、100人以上の死者を出し、数億ドルの損害を与えました。このような嵐は、すでに不利な立場にあり、そもそも復興のための資産が少ない有色人種や貧困層、労働者階級の地域にとってはとくに壊滅的です。嵐は社会格差および経済格差を深め、増幅させます。

被害を受ける同じ場所を再建しつづけることには意味を成しません。海を制御できるなどと考えるのはまったくの思い上がりで、必然に対しての計画を拒むのは事態を悪化させるばかりです。これは嵐による被害に関してだけでなく、海面上昇においても同様です。

氷が解けるにつれて、海は拡大します。海水が温まるにつれて、海は膨張します。地球全体の海水位はこれまですでに20センチメートル上昇し、今世紀末までにさらに1メートル以上高くなる可能性があります。これにより沿岸地域からの大規模な人口移動が起き、数百万人もの気候難民が生まれます。たとえばバングラデシュは、世界の炭素排出量のわずか0.4パーセントしか排出していないにもかかわらず、2050年までに国土の17パーセントが沈没すると予測され、2,000万人が移住を迫られます。ルイジアナのアイル・ド・ジャン・シャルルとニューヨークのスタテン・アイランドのオークウッド・ビーチでは、すでに地域全体が移動させられたケースもあります。そして次には、ニュートック(パタゴニア・フィルムズのドキュメンタリーで取り上げられた村)をはじめとするアラスカの先住民族の村々、マイアミの一部、ノースカロライナとサウスカロライナの一部(アフリカ系アメリカ人が設立した最初の町であるプリンスヴィルを含む)がつづきます。

私たちは危険な場所から移動する地域を支援する公正な方法を見つけるとともに、かけがえのない沿岸地域の一部に別れを告げなければなりません。そしてそれが起こったとき、私たちには失ったものに哀悼を捧げ、変化に順応する方法が必要です。

海の正義を追求する
海洋保護を考えるとき、最初に頭に浮かぶのは魚、イルカ、クジラ、サンゴ礁、そして南洋の離島などではないでしょうか。でも海洋保護とは人に関する課題であり、さらに正義の問題でもあります。

有色人種や貧困層、労働者階級からなる地域はしばしば、海洋資源の利用から除外されているか、最も荒廃して汚染された場所に追いやられています。彼らは気候変動や汚染からの影響を直に受けるにもかかわらず、その原因にはほとんど加担していません。海洋保護、復元、気候解決策の進め方を考えるとき、私たちは海の正義についても考えなければなりません。海洋保護にどう取り組み、海洋気候解決策をどう実践するか、それが非常に重要です。

最近では、私が共同で率いる栄誉を与えられた「オーシャン・ジャスティス・フォーラム」がその目的に向かう取り組みとして挙げられます。アラスカ先住民の昆布養殖家から、ニューイングランドの漁師、カリフォルニアのラテン系女性サーファー、ハワイの先住民、メキシコ湾の黒人まで、数々の多様な沿岸地域を代表する18の団体で構成され、海洋政策の中心に正義を位置づけるための一連の指針と優先順位を決定します。18団体が満場一致の政策綱領を打ち出すというのは、小さな奇跡とも呼べる偉業です。(現在ではさらに40以上の団体がこのフォーラムに加盟しています。パタゴニアは初期に参加した団体の1つです。)それは極めてシンプルに要約することができます。

公正かつ公平な海洋政策の必須項目:
1.海と海が万物に与える利益の保護
2.海洋汚染によって沿岸地域にかかる過剰負担の緩和
3.海および海に依存する地域を維持する経済の奨励
4.海から正当な手段で供給される再生可能エネルギーの推進
5.災害対応と適応投資における社会的一体性の優先

これが、海の正義という未来へたどり着くためのロードマップです。海が劣化したあらゆる原因には胸がつぶれる思いで、それにともなう影響はじつに膨大です。でも、この記事のはじめを思い出してください。海は解決策にあふれています。海は深刻な脅威にさらされていますが、同時に立ち直る力を秘めています。断固とした公正な政策、地域社会の行動、そして企業の役割の遂行により、海は炭素を隔離し、海岸線を守り、再生可能エネルギーを生み出し、栄養価の高い持続可能な海産物を提供し、何億もの善良な仕事を支援しながら気候解決策の中核的要素となり得るのです。

じつのところ、私たちは海が受けるべき敬意を払ってきませんでした。そしていま、私たちはこの現状を変えなければなりません。健康な海は食料安全保障、経済、文化、そして私たち自身の健康に欠かせません。海のことを考えずに気候危機問題に取り組んでも、どうにもならないのです。

機知に富んだ海の気候解決策と海の正義に向かって、進みませんか。

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