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パタゴニアの創業者が語る:「なぜ持続可能性は存在しないのか」

 /  2012年6月25日 読み終えるまで7分  /  フットプリント, デザイン

インタビュー:カイ・リスドール
2012年4月17日(火)Marketplaceにて放送

パタゴニアの創業者が語る:「なぜ持続可能性は存在しないのか」

カイ・リスドール:イヴォン・シュイナードは「偶然の環境保護者」だと呼べるかも知れません。これはあまり親切な表現ではないかもしれませんが、アウトドアウェアの会社であるパタゴニアの創業者の彼自身の言葉を借りているだけです。シュイナード氏は若いころ、登山界のパイオニアで、1950年代に両親の裏庭でクライミングのギアを作りはじめました。それ以来、ハイキングをしたことのある人なら誰でも知っているブランドを作りました。彼は会社を利益性にだけではなく、アクティビズムにも導きました。生活賃金を支払うことの重要性から環境を保護することまで、パタゴニアという会社には、会社がどう経営されるべきかというシュイナード氏の展望が反映されています。

その展望は彼の新しい本『The Responsible Company(責任ある会社(仮題))で詳述されています。今日はパタゴニアの役員室でのイヴォン・シュイナード氏との会話から、登攀の際に岩に打ち込むピトンが益となるよりも害をもたらすことから彼が学んだ教訓についてのインタビューをお届けします。

イヴォン・シュイナード:ああ、それは私たちが正しいことをしていると考えていたことの意図せぬ結果だった。私たちは何度も打ったり取り出したり、そして長い間使えるようにと、硬いスチールからピトンを作った。だが大勢のクライマーたちが打っては取り出してを繰りかえすうちに、岩を破損するようになった。それが学んだ最初の教訓だったといえる。私たちが損傷を与えている原因だということは事実で、そのために何かすべきだという教訓だった。

リスドール:もちろん、責任税というものがありますよね? だから私はパタゴニアに行って、とても役に立つコートに200ドル出します。でもギャップに行けば44ドル99セントでコートが買えます。

シュイナード:貧しい人たちは安物を買う余裕はない、と誰かが言っていたね。

リスドール:いい言葉ですね。

シュイナード:コストコに行って氷を入れた途端に壊れてしまうようなミキサーを買うより、一生使える本当に上等なミキサーを買えるまでお金を貯めるんだ。

リスドール:この本は伝導的です。とても非宗教的な意味で。あなたは人びとにこの本を読んでもらって、ビジネスのやり方を変えてほしいと願っています。その場合、そうした人たちがビジネスのやり方を変えるその動機を気にしますか? もし良い宣伝の意味で、肯定的な反応を得られるという理由でやり方を変えてもOKですか? それとも重要なのは、彼らが正しい理由のもとにそのように行動することですか?

シュイナード:行動してくれるかぎり、その理由はどうでもいい。より責任ある過程に乗り出してしばらくすると、それが気分のいいものだということに気付くと思う。するとそれが癖になる。新世紀世代の若者たちはそれを強く求めるだろう。誰もが同じ物を作っていて、最終決定権を握っているのは消費者なんだから。

リスドール:ちょっと振りかえって考えてみたとき、70代のあなた、つまり73か74歳の年寄りが、新世紀世代がほしがっているものを与えようとしているというのは面白いことだと思いますか?

シュイナード:ああ、自分がこんなことをするなんて思ってもみなかったよ。私がこんなことをやっているのは、この地球の運命をとても悲観視しているからだ。より害の少ないビジネスのやり方があると思っている。

リスドール:実際にあなたがしていることですが、あなたが持続可能性について多く語らないのは、興味深いと思います。あなたはこの言葉は使い古されるようになって、安っぽくなってしまったと言います。

シュイナード:ああ、グルメみたいにね。グルメバーガーを注文したとする。だがそれは中身の薄い言葉だ。人間の経済的企てに関しては、持続可能性というものはない。私たちはここでは汚染する者であり、そして私たちはそれを認識している。私たちにできることは与えるダメージを最小限にするだけだ。持続可能性はない。

リスドール:パタゴニアがウォルマートと一緒にいくつもの協会や組織に参加しているのはとても興味をそそられます。2つの会社はいわば呉越同舟ですよね。

シュイナード:ああ、アパレルのための持続可能性インデックスを作るために、アドバイスと協力をしている。数年内には、デパートへ行ったカスタマーはいまの携帯電話か、あるいは同じような器機か何かでバーコードをスキャンする。するとジーンズを作るのに使われた労働慣行や環境への影響のグレードがわかる。だからカスタマーは「これは2で、これは10。だったら10の方を買おう」と言えるようになる。

リスドール:何年前かは知りませんが、あなたがビジネスをはじめたとき、ここで会社を経営し、しかも世界を変えようとすることになるなど思っていましたか?

シュイナード:いや、まったく思っていなかった。私は将来のことについて考えるのはあまり得意じゃない。その日のために生きているみたいなものだから。

リスドール:まさか、私は信じませんね。

シュイナード:いや、本当に下手なんだ。

リスドール:では、この次は? この先もあるでしょう?

シュイナード:そうだな。まず、これが終わったら、サーフィンに行くよ。

リスドール:いやはや。イヴォン・シュイナードさん、お時間を割いていただきありがとうございました。

シュイナード:いや、どういたしまして。ありがとう。

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*このインタビューは4月17日(水)にUSのラジオ番組『marketplace』で放送されたものです。インタビューの模様は以下の音声ファイルからもお聞きいただけます。

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The Responsible Company: What We’ve Learned from Patagonia’s First 40 Years』で、パタゴニアの創業者イヴォン・シュイナードとフットプリント・クロニクルの共同編集者ヴィンセント・スタンレーは、パタゴニアでの40年にわたる経験と他の会社の現行の取り組みについての知識をもとに、私たちの時代における責任あるビジネスの要素について語っています。パタゴニア・ブックス発行

日本語版は2012年冬発売予定です。もうしばらくお待ちください。

クライマーでもあるイヴォン・シュイナードが自分自身の人生について、そして車のトランクに積み込んだ手製のピトンを旅先で売るというビジネスの出発点から現在までを綴った『社員をサーフィンに行かせよう – パタゴニア創業者の経営論』はこちらからお求めいただけます。

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