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マイクロ・パフの真価を語る

寺倉 力  /  2018年11月22日  /  読み終えるまで9分  /  デザイン, クライミング, サーフィン, スノー, トレイルランニング

バリローチェ、フレイの山小屋から岩だらけの稜線を歩く

編集者、あるいはライターとして日々痛感しているのは、フィールドで使うウエアの真価を伝えることの難しさだ。使う側のニーズが多様化するなかで、今のウエアは、どんなコンディションの、どのようなフィールドで、どう着用するかという視点で開発されたニッチなプロダクトが多いわけで、その持ち味を限られた誌面で紹介するのはけっこう難しい。

2017年秋に登場したマイクロ・パフ・フーディもまた、そうした製品だ。濡れても保温力を維持する化繊インサレーションでありながら、ダウンのように軽量で、非常にコンパクトになる。けれども、厚手のダウンジャケットほど圧倒的な保温力があるわけでもない。だから、使い方によっては中途半端な印象を受けかねないし、ダウンとの違いを理解するには、マテリアルの特性についてのある程度の知識も必要だ。

今回は4人のパタゴニア・アンバサダーにインタビューする機会を得た。スキー、トレイルランニング、サーフィン、アルパインクライミングと、日々異なるフィールドでマイクロ・パフ・シリーズを酷使している彼らに話を聞き、そのコメントをできるだけ忠実に再現してみようと思う。ひとつのプロダクトに対して、それなりのボリュームを割いて伝えること。これも雑誌ではなかなかできない企画でもある。

まずは、スキー・アンバサダーの大池拓磨。彼の使い方は多くのバックカントリースキーヤー、スノーボーダーと共通するものだ。バックカントリーでは防寒着としてバックパックに常備し、休憩や天気待ちなどのときにシェルの上から着込む。さらに大池は、寒い日のスキー場ではシェルの下に着込んだままゲレンデを滑ることもよくあるという。

マイクロ・パフの真価を語る

ストームの隙間を狙い新雪を踏み込む

「バックカントリーでは休憩や撮影での天気待ちのときにバックパックから取り出したマイクロ・パフ・フーディを重ねるというスタイルです。ただし、同じバックカントリーでもガイドの仕事中はゲストのペースに合わせて登るし、待ち時間も多いのでほぼシェルの下に着込んだままですね。

また、寒い日のゲレンデではシェルの下に着て滑ることが多い。以前はナノエア・ジャケットを着ていたんですが、感覚的にはそれより温かく感じるかな。もちろん滑走中は汗をかくし、ナノエアのような通気性がないはずなのに不思議と蒸れは感じない」

マイクロ・パフの真価を語る

奇岩を抜け稜線に立つ。ドロップ前のリラックスした時間

「ナノエアが出たときも衝撃的でしたが、マイクロ・パフも同じくらいのインパクトでした。この夏の3週間の南米スキートリップ中は、山小屋泊やテント泊もあったけれども、いつもマイクロ・パフ・ジャケットを着っぱなし。温かさと軽さ。濡れても大丈夫という安心感の高さ。すごく気に入っています」

汗をかいても蒸れ感がないというのは個人差のある話だと思う。だが、汗をかいた状況についてはトレイルランニング・アンバサダーの石川弘樹の話がさらに興味深い。寒い日にはマイクロ・パフ・フーディを着たまま走ることも少なくないのだという。

マイクロ・パフの真価を語る

冬の斑尾を走る。Photo: Eriko Ishikawa

「基本的には走り始める前や、山頂などで休憩する際や、走り終わった後の防寒着として使っていますが、気温が氷点下になるようなときは着たまま走るんですよ。当然、心拍数を上げて走る状況だと蒸れてくるので脱ぎますが、それでもトレイルランナーにとってありがたいのは、化繊インサレーションだということ。走ってがんがん汗をかいても大丈夫という安心感がありますね。

夏でも標高の高い、たとえば2000m以上の山に行くときは、必ずバックパックにしのばせています。以前は軽さとコンパクト性でウルトラライト・ダウン・フーディーでした。でも、汗をかく状況でダウンは絶対に着たくなかった。その点、マイクロ・パフなら汗だくになったときでも気にせず羽織れますし、軽くてコンパクトだからトレイルランニングで持ち運ぶにはもってこい」

マイクロ・パフの真価を語る

「重さをいえばキリがないのですが、260g少々という重量は走っていて気になるレベルではない。むしろ、重要なのはランニング用の小さなバックパックに、必要な装備と一緒に収まるかどうかですが、その点、マイクロ・パフ・フーディは温かさの割に非常にコンパクトになる。パッカブル仕様のポケットの収納袋ではなく、より小さなスタッフバッグに無理矢理押し込んで、さらに2/3くらいは小さくしています。

トレイルランニングでも山に行くときはこうした防寒着を装備しましょうと言ってきましたが、まだ持っている人はそんなに多くない。もっとそれを伝えていかなければと感じています」

続いてサーフィン・アンバサダーの武知実波に話を聞いた。現在、JPSA(日本プロサーフィン連盟)のツアーを転戦する彼女は、遠征時の荷物の軽量化は大事なこと。その点、軽量コンパクトなマイクロ・パフ・フーディはもってこい。また、つねに潮風にさらされ、場合によっては潮気をたっぷり吸ったウェットスーツの上からでも羽織れるこのジャケットは、サーファーにとってこれ以上ない防寒着ではないかと語る。

マイクロ・パフの真価を語る

手足かじかむ冬の海、潮風がジャケットを包む。

「夏から秋の変わり目くらいで、少し寒くなったなと思ったらマイクロ・パフ・フーディを手にして、そこからはほぼ毎日のように着ています。私の地元、徳島は比較的温暖なイメージがあると思いますが、実はスキー場があるんです。冬場は0度を下回ることもあるし雪も降る。また、海風が吹く海岸沿いは内陸より寒いので、波のチェックには欠かせません。また、JPSAのツアーは4月から11月まで年8戦ですが、やはり軽くて小さくなる点が遠征の移動ではたいへんありがたいです」

マイクロ・パフの真価を語る

ある冬の日の、ファーストライド。

「なかでもマイクロ・パフのいいところは化繊なので、潮風にさらされてもすぐに洗える点ですね。潮風はべたべたしますし、実はサーファーでも潮風が嫌いな人は多いですし、私などは海から上がったらすぐシャワーを浴びたいタイプ。なので、着ているものもすべて洗いたいと思っていたときに出合うことができたウエアなので、とても良かったです。もちろん、大会のときはウェットスーツで待機する時間が長くなるので、ウェットの上からも着ています。あとで洗えるから大丈夫という安心感が素晴らしい。サーファーが納得する1着だと思いますね」

クライミング・アンバサダーのジャンボこと横山勝丘の話はこのプロダクトの核心を突くものだ。7年前から毎年のように南米パタゴニアに遠征し、フィッツロイ山群の全山縦走(といっても尖った岩峰での継続クライミング)にトライし続ける横山にとって、登攀のスピードアップこそ最大のポイント。そこでこそ、まさにマイクロ・パフ・シリーズの真価が発揮されるシチュエーションだった。

マイクロ・パフの真価を語る

ピエドラ・ブランカにてボルダリング。写真:佐藤正純

「フーディもジャケットも使っています。サンプルの段階からだから3シーズンくらいかな。どんな場面でも使ってますが、一番はやはりパタゴニアでの本気のクライミングの時。その点、このマイクロ・パフが優位なのは、軽さに対する温かさですね。

以前はウルトラライト・ダウン・フーディを使っていました。正直、それだけでは寒いですし、もっと温かいウエアはあるんですが、登攀スピードが大事だから重たいものは持っていけない。だから我慢して、少しの寒さは割り切る。

そこで僕の手持ちのウルトラライト・ダウン・フーディを実測すると340g。で、このマイクロ・パフ・フーディは実測で260g少々と、80gも軽いんですよ。さらに、体感としては、より温かい。だからもう、その時点で圧倒的にマイクロ・パフ・フーディが優位なわけです。

さらにいえば、ダウンは濡れると保温性が落ちるじゃないですか。また、パタゴニアは岩肌が非常に粗いから、生地が破れる恐れがある。そうなるとダウンの場合は羽毛が飛び散りますから、その時点で防寒着としては役に立たなくなる。マイクロ・パフだとそのリスクがなくなるわけです。化繊だから濡れても保温性は落ちないし、生地が破れても中綿が飛び出さないから、保温ジャケットとしての役目を果たしてくれる。そう考えたときに、これしかないなと。また、現場で使ってみた印象としても、これ以外にはなかった」

マイクロ・パフの真価を語る

ティト・カラスコ北壁1ピッチ目を登る。写真:佐藤正純

「寒い時期の瑞牆山でもいつも持って行きます。ただ、高難度を狙ったフリークライミングのビレイジャケットとして使うときは、もっとぶ厚い、たとえばDASパーカを着ますが、マルチピッチやボルダリングではマイクロ・パフ・フーディを着たまま登ることもあります。当然、汗は抜けないんだけど、汗をかかない程度のクライミングでは着たまま登っても問題ないので、かなり汎用性は高いですね。

強いて難点を言えば、生地が薄いこと。ただ、パタゴニアの岩はすごく粗いから、もう少し強度のある生地にしたところで、結局岩にひっかかったら破れるわけです。軽さと強さはトレードオフだから、僕は保温性が維持されればいいと考えます。だから僕のマイクロ・パフ・フーディはパッチだらけ。でも見た目重視でもないから気にしませんけどね。

本気で1日動き続ける人に着てもらいたいウエアですね。値段だって安いものではないし、だからといって大事にするのではなく、山に持って行って軽さと温かさを実感して、使い倒すくらい着てもらったほうが、買った価値があるんじゃないかと思います」

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