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すべては何でもないこと:マイクロ・パフを鍛造する

パタゴニア  /  2018年2月13日  /  読み終えるまで6分  /  デザイン

パタゴニア本社でプルマフィルの可能性を研究する素材開発者のクリスティン・アムシード。カリフォルニア州ベンチュラ Photo: Kyle Sparks

パタゴニアで働く私たちの場合、最高のアイデアはたいてい野外でひらめきます。でもときに単純な問題が複雑な解決策を生み出すきっかけとなる場合があります。インサレーションの開発はまさにその実例です。ダウンは濡れると熱を封じ込めるロフトを失い、化繊は温かさと軽さとコンパクトさにおいてダウンと同等のレベルに到達しません。私たちはダウンの加工から化繊のインサレーション、そして片寄りを防ぐためのさまざまなキルトパターンまで、あらゆる試みを実践してきましたが、そうした方法はそれぞれの弱点の解決には成功したものの、両方の優れた利点を最大にいかすまでには至りませんでした。

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プルマフィルの螺旋状のフィラメント。 Photo: Kyle Sparks

その後2007年、パタゴニアの素材研究開発マネージャーは、核繊維がマイクロフィラメントによって螺旋状に包まれた、興味深い化繊インサレーションを見つけました。見た目も感触も機能性もダウンに類似し、しかもそれまでに試したどの化繊よりも重量に対する保温性に優れていました。それから7年間にわたってラボで徹底的な実験を繰り返したのち、私たちは「プルマフィル」と呼ばれるインサレーションにたどり着きました。これは非常にコンパクトに収納可能ながら、重量に対する保温性が他の主力の化繊インサレーションよりも40%優れているというものです。ウェアの使用可能期限における酷使を想定するパタゴニアの洗浄テスト「キラーウォッシュ」では、プルマフィルはロフトの損失がほぼ皆無であるという目覚ましい結果を示しました。それまでに私たちがテストや観察をしてきた化繊の大半は、洗濯後に劣化するか、もしくは片寄って冷域の原因となっていましたが、この新繊維はあらゆる酷使に耐えたのです。「3年前、ダウンを模倣する化繊インサレーションの市場調査を実施。その際、唯一パタゴニアの耐久性基準を満たしただけでなく、他の化繊インサレーションに勝ったのがプルマフィルでした」と、素材開発者のクリスティン・アムシードは語ります。

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初期の試作品を開発するシニア製品デザイナーのクリスチャン・レジスター。 Photo: Kyle Sparks

それでも、パタゴニアのデザイナーたちはこのインサレーションの使い方に行き詰りました。シェル素材の多くはインサレーションがロフトを最大限に発揮するのを妨げ、さらにシェルと組み合わせると、縫製のパターンによっては撚糸が絡み合ったり、ロフトが失われたりしました。パタゴニアのシニア製品デザイナーのクリスチャン・レジスターはその後さらに1年を費やし、インサレーションの撚糸1本1本を固定し、インサレーションの使用量を最小限に抑えながら、その重量に対して最高の保温性を維持する構造を開発。縦に重ねた断続的な縫い目のパターンによりインサレーションの片寄りを防ぎ、重量と冷域ができる可能性を削減しました。さらに開発チームは熱がジャケット内を滞りなく循環するよう、少ない数で大きめのパターンを考案。「このキルトパターンに発展していったのは、異なる幅で重さとロフトと耐久性をテストしている過程でした。まず最善のキルティングの寸法を特定し、それから必要最小限の糸だけを使って、ウェア内の空気の循環を維持する構造を編み出しました」と、レジスターは話します。それまでにパタゴニアが採用した最軽量の織り素材のシェルにこの構造を組み合わせ、ふたたびテストした結果得られた数値は驚くべきものでした。「それはパタゴニアのテスト基準を超える最軽量の素材で、生産も可能でした」と、アムシードは言います。マイクロ・パフ・ジャケットはパタゴニアのどのダウン製品よりも軽量で、その軽さに対して保温性に優れ、前例のないコンパクト性を誇ります。生地を最も効率よく使用する他のパタゴニア製品にならった型により、廃棄物となる端切れの発生も抑えています。

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ラボで保温性のテストが施される試作品。 Photo: Kyle Sparks

社内での微調整と並行しながら、フィールドテストも繰り返しました。デザインを洗練するために試作品を作り、パタゴニアのアスリートたちにクライミング、ランニング、スキー、長期遠征計画を頼み、初期のモデルを徹底的に酷使してもらいました。テスターのほとんどがジャケットのインサレーションはダウンだと思い込み、化繊だと知ると非常に驚きました。「ラボのテストで特別な手応えは感じていましたが、試作品を作って実際にフィールドで試してみる必要がありました」と、レジスターは語ります。「いったんこのジャケットを手にすると、誰もが二度と手放したがりません」。その軽さに対する温かさへの反応も一致していました。「すぐに何かすごいものを作っていることに気づいた」と言うのは、クライミング・アンバサダーのケリー・コーデス。開発以来3年が経った現在も、マイクロ・パフ・ジャケットは数多くのテスターにとって最も使用頻度の多いアイテムです。

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フィールドでマイクロ・パフの保温性をテストするコリン・ヘイリー。アラスカ山脈 Photo: Mikey Schaefer

いまここにあるのは、パタゴニアのデザイン精神を証明するジャケットです。1つの問題の解決に着手してから、10年におよぶ献身的な調整と精密な改良を経て、私たちはキルティングのポイント数という細部にいたるまで、快挙を成し遂げました。「濡れてもロフトを維持しながら、可能なかぎり軽量で温かく丈夫な製品を作るということは、登山家たちが山を登りはじめた当初からの目標でした」と、レジスターは語ります。「最高のアイデアは、長い時間を要することもあるのです」

このストーリーの初出はパタゴニアの2018年Januaryカタログです。

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