「我ら政府の持ち駒にあらず」
2025年の初め、林野部と国立公園局の大量解雇をきっかけに、抗議活動が全米に広がった。それ以降、裁判所は連邦政府に対し、解雇された全職員を復職させ、その間の賃金を支給するよう命じている。こうした救済がなされてもなお、復職した多くの職員は、連邦政府の今後の人員削減について雇用不安を口にしている。
こうした混乱や不確かさが、職員や彼らの管理する公有地にどう影響するのかをもっとよく知ろうと、解雇・復職の当事者である5人の公園職員に話を聞いた。米国の国立公園や森林に奉仕しようと誓ったことを除けば、職員たちに共通する点はあまりない。1日数百人のビジターに対応する人もいれば、公園内の小規模事業の管理や、政府と先住民の関係づくりに従事する人もいる。さらに表には出ないが、海中のケルプの森や、衛星画像で山火事のパターンを研究する人も少数いる。これらの人々に共通するのは、自然界への愛とその保護への献身だ。
これらのインタビューは、職員の解雇後、裁判所命令による取り消しの前に行われた。長さや明確性については編集を加えたが、語られた意見はすべて職員たち自身のものである。本記事の公開に先立ち、復職した先住民担当のある連邦職員は、報復人事を恐れ掲載承諾を撤回した。
キーナン・チャン
カリフォルニア州チャンネルアイランド国立公園(チュマシュ族とトンヴァ族の先祖伝来の土地)の海洋科学者。
ベンチュラ海岸沖の5つの離島で構成されるチャンネルアイランド国立公園で、生物科学系の技術者として勤務していました。続く世代が僕と同じようにこの環境を享受できるように、生態系へのより良い理解を通じて、この国立公園と周辺海域に奉仕し、保護することが僕の仕事です。2015年に季節職員として、この公園で働き始めました。それ以来、非連続的に5期、岩礁潮間帯やケルプの森の観測プログラムのために、データの収集や分析に従事し、その後常勤職に移行しました。
体力的にはキツイけれど、とてもやりがいのある仕事でした。潮間帯の観測では、理想的な干潮が見られる秋冬に、数人の科学者とグループを組んで、チャンネルアイランドで数週間を過ごしたものです。観測拠点までは毎日ハイク、そしてキャンプ。ボートやカヤックを使って20カ所ある長期サンプリング地点の1つに着いたら、ムール貝、ヒトデ、アワビ、藻類の何であれ、多種多様な生物を数えます。タールレベルやムール貝礁の健全性など、生態系に関する情報を測定し、その後は本土に戻って、データをさらに分析します。
ケルプの観測プログラムは、この種のものでは最長のプログラムなので、活動は多岐にわたります。僕らのグループは、長い時にはシーレンジャー2号(国立公園局が所有するボート)で1週間を過ごし、33カ所のさまざまな海中拠点で、日の出から日没までダイビングをしたものです。最も多い時で11件の調査計画書を抱え、数百種類の生きもの(ホタテ、ロブスター、ウニ、巻き貝など)を数え、そのサイズ、年齢、性別を推定しました。僕は公園で働きながら500回のダイビングを達成し、生きものを数えるために約3万分間を海中で過ごしました。ケルプと岩礁潮間帯の観察、どちらのプログラムも、約40年前に始まった非常に重要で有益な長期的観測プログラムです。
水が冷たい、潮が速いなど、必ずしも快適なコンディションとはいえない時もありました。でもその一方で、魔法みたいな日もあります。海面に向かって60フィート伸びるケルプの間を泳いでいると、そういう日には自分をつねって「おっと、仕事で来たのだった」と言い聞かせなければなりません。太陽が降り注ぎ、幾筋もの光が差しこむ中、海中を遠くまで見渡しながら、泳ぐ魚たちを従えてケルプの葉状部の間を進むのです。
―キーナン・チャン
公園の保護は、僕のアイデンティティの大きな部分を占めるようになっていました。だから、解雇され、それを奪われたのはすごくつらかった。僕らが前述の観測プログラムの資料を持ち出したら、どうなるのかも心配です。これらのプログラムは、この海域をみんなが楽しめる健全なものに保つうえで、地域社会、政策立案者、広く科学界全体にとって不可欠なデータを収集しています。
公有地が政治の道具ではないことを人々に理解してもらいたい。公有地はすべての人が楽しむためにあります。こうした土地と海域を管理する我ら連邦職員は、政府の持ち駒ではありません。僕らは専門家です。専門的訓練を受け、専門知識を持っています。我々の公有地を守り、維持するために政府に雇われた者であり、その忠誠心は常にそうした使命のもとにあります。
マリア・ディアズ
アラスカ州トンガス国有林(トリンギット族、ハイダ族、ツィムシアン族の先祖伝来の土地)の環境保護教育者。
アラスカで暮らし、ここでレンジャーになることがずっと夢でした。ペルーで生まれ、幼い頃に米国に移住し、以来、子ども時代のほとんどをノースカロライナで過ごしました。近所に森はあったのですが、子どもの頃は気付いていなかった。13歳の時、祖母がアラスカへクルーズに連れて行ってくれて、そこが大好きになりました。デナリで、そりを引く犬を見たり、それからあの巨大なヒトデを見たりしたのを覚えています。あの美しさは本当に忘れられません。
この2年間、私はメンデンホール氷河ビジターセンターのパークレンジャーを務めていました。ビジターセンターのあるトンガス国有林は米国最大で、その広さは1,670万エーカー、アラスカ南東部の大部分を占めます。ビジターセンターは道路網に直結し、ここは世界で最もアクセスしやすい氷河の1つです。氷河に通じる登山道がいくつかあり、訪れるビジターの数は年間50万人をゆうに超え、1日軽く数百人と会話することもありました。
私の仕事の多くは、環境保護教育が中心でした。野生のサーモンの泳ぐ小川がセンターを横切って流れていたので、魚に関することや、氷河がどのように移動するのか、なぜ氷河が重要なのかについて、たくさん話をしたものです。また登山道を観察しては、ビジターが出会えるかもしれない野生生物や、彼らが興味を持った花について解説しました。なかにはここが連邦政府の所有地であることさえ知らず、ビジターセンターにやってくる人々もいました。けれど、そうした人も、私たちがやっていることに対して感謝の気持ちを抱くようになるのです。人は初めて氷河を見ると畏敬の念を覚えますが、私はよく人々の目の中にそれを認めました。
―マリア・ディアズ
私を含むビジターセンターのパークレンジャー全員が、2025年のバレンタインデーに解雇されました。胸に一撃を食らったという感じ。現在、センターには他部門から異動してきた職員がひとり常駐するだけです。こうした人員削減は、ビジターの学習体験全般をひどく損なうだけでなく、野生生物との遭遇や登山道の一般的安全性だけをとっても、かなり危険な状況を招く恐れがあります。かなり近くでクマに遭遇したこともあり、前述の小川で保護すべきサーモンを釣ろうとする人もいました。常勤職員が1名現場にいるだけでは、こうした状況を監視するのは不可能です。
この先、自分がどうなるかは分かりません。それでも、私は自分のコミュニティに奉仕することをやめないでしょう。連邦政府は私からこの職を奪おうとすることはできても、私が人を助けることを止めることはできません。それだけは決してあきらめません。
エミリー・ハンセン
カリフォルニア州セコイア・キングスキャニオン国立公園(モノ[モナチェ]族、ヨクツ族、トゥバトゥラバル族、パイユート族、西ショショーニ族の先祖伝来の土地)の営業権管理者および認定EMT(救急救命士)。
パークレンジャーになるなんて思ってもみませんでした。企業のパワフルなビジネスウーマンになるのが夢だったんです。なろうとはしたんだけど、あまり性に合わなくて。だから2015年、すべてを手放すことに決めました。家を売って、1年間旅をして、アリゾナに流れ着きました。RVで寝泊まりしていた頃、車上生活者向けの求人情報サイトの広告メールで、非営利団体の<Grand Canyon Conservancy>がグランドキャニオンで働く人を募集しているのを目にしました。それに採用されて、グランドキャニオン北端のビジターセンターに配属され、解説員レンジャー全員と肩を並べて働くことになりました。すばらしい人たちでした。「すごい。みんなこの仕事に人生を捧げているのね。それならわたしも」と思ったのを覚えています。
夫と私は生活のバランスをとりたくて、最近セコイア地区へ引っ越しました。ここの自然は広大ですが、公園の職員は少人数で、しかも緊急時に対応するには未熟です。特に激流のシーズンには安全上の緊急事態が発生しやすくて、有事の際はすべての活動グループに招集をかけ、その場でスペシャリストを養成したものです。私は救急救命士、捜索・救助テクニカル・オペレーター、認定消防士なので、必要に応じて公園内で救急やその他の緊急事態に対応していました。
―エミリー・ハンセン
私は最近、営業権管理の専門職として勤務していたセコイア・キングスキャニオン国立公園をクビになりました。ロッジ、レストラン、ギフトショップ、マーケットの民間委託を支援したり、公園内の小規模業者の営業許可を管理したり、結婚式や合衆国憲法修正第1条に基づくデモ活動などのイベントへの特別使用許可を手配したりする仕事でした。
緊急時に対応できるよう訓練された職員がとても少ないので、私たち熟練スタッフが自分の持てる資格のすべてを更新し続けることがすごく重要です。それで一斉解雇の前の週、私は上級EMT再訓練コースを受講するためにヨセミテへ行きました。その後、車でこちらに戻る途中に解雇されたのです。思い起こせば衝撃的ですね。引退まで公園局に務める計画でしたし、39歳になってやっと始めた仕事でした。たどり着くまでに長い時間がかかりましたが、着くとそこは自分の家のようでした。自分のコミュニティのように感じられたのです。
解雇されてから一度、抗議活動に参加するために公園に戻りました。そこに広がる樹々は圧倒的で、言葉を失うほどです。グラントグローブを歩いていると、遠い昔に伐採された古い切り株の隣に巨樹がそびえ立っています。それは神々しさと同時に胸が痛む思いを抱かせる光景であり、こうした場所を守る必要性を示す証でもあります。今回の一連の解雇をはじめ、この国で起きているさまざまな問題によって、今後2年間に何が起きるか、私たちの国立公園がどのような影響を被るかを考えると、ゾッとします。けれど、幹周り9メートル、高さ80メートルの木の前に座っていると、自分自身を取り戻せるのです。人生は続き、生命は生き抜く。そうしたシンプルな事実こそ、この困難な時期に私にとってのよりどころなのです。
チェルシー・アンドレオッツィ
米国林野部の生態学研究員。
昨年、林野部の「森林火災危機戦略」に協力するために連邦職員になりました。これは西部10州21地域で山火事からの回復力を高めるために、前政権下で進められたプログラムです。私の仕事は、植生管理の実践によって戦略的にこれらの地域の生態系やコミュニティを保護し、気象変動に対する回復力を高める方法を当局に理解してもらうことでした。また私は、どのようなコミュニティが山火事の危険に対して極度に脆弱なのかを発見しようとしていました。それが分かれば、認識が高まり、そのコミュニティを適切に保護する戦略の参考となるからです。
いつもオープンな空間や自然な場所とのつながりを感じてきました。私は田舎で育ちましたが、エバーグレーズの近くとはいえ、そこは皮肉なことにあのフロリダ州パームビーチ郡です。ですから、自分のコミュニティが森から住宅地へ変わっていくのを目の当たりにしました。その喪失感、子どもなりに地域の変わりようを目にするのがどんな気持ちかを覚えています。
大学卒業後、アラスカのトンガス国有林の近くへ引っ越しました。そして、その地域のコミュニティや、彼らが地域の資源とどれほど深く結び付いているかに心を奪われました。最終的にフィールド生態学者としてカリフォルニアに落ち着き、その間に博士課程を修了しました。多くの時間をレッドウッドの森で過ごすようになり、林冠まで木登りしたことだってあります。そうした活動を通して、保護プランの策定をはじめ、人間やその他の生きものがどのように環境を利用し、生息しているかを考えることに関わる、あらゆることへの情熱を育んだのです。
2025年のプレジデントデーに解雇通知を受け取りましたが、そこには私の仕事が「公益に資するものではない」と書かれていました。通知を読んで、強いショックを受けたのを覚えています。なぜなら、私たちのしていることはすべて公益に該当します。多くの人は気付いていないだろうけど、山火事が集落や原野におよぼす危険を減らしながら、その土地の水利を改善したり、野生生物の生息地を保護したり、あるいは原生林の保護を通じて炭素を貯蔵したりなど、その他のメリットをもたらす方法は数多くあります。
―チェルシー・アンドレオッツィ
実は生態系の多くは、火事に依存します。先住民社会は昔からそれを知っていて、野焼きの風習によって景観を管理してきました。林野部では健全な火事を取り戻そうとする動きが多くあったし、先住民や牧畜民のコミュニティとの協力体制を築くことにも、かなり尽力してきました。
こうした努力も、私の仕事も、すべてが今や連邦機関の人員削減によって蝕まれつつあります。以前は極めて重要であるとされた対策を、この緊急時に突然差し止めるとは、どういうことなのでしょう。私に残された最大の懸念の1つはそれです。
国立公園局や米国林野部の職員たちは、この先どうなるのか?
上記のインタビュー後まもなく、連邦判事は解雇された連邦公有地の職員全員を復職させるよう命じた。2025年初めにインタビューした5人の職員のうち、現在3人が元の仕事に復帰している。残る2人は、国立公園局や林野部の数千人の職員がそうしたように、2025年9月30日までを有給休職とみなす希望退職届に署名した。それと並行し、政府全域にわたる雇用凍結によって、ただでさえ人手不足の国立公園局と林野部の体制は数千もの空席を抱えている。国立公園だけでも24%の人員削減である。結果として、ビジターからは、汚いトイレ、緊急時対応の遅れ、キャンプ場や登山道の閉鎖が報告されている。
2025年8月、国立公園局がヨセミテ国立公園のパークレンジャー、シャノン“SJ”ジョスリンを解雇した際、職員の間で再び失業の懸念が高まった。熱烈なクライミング愛好者でコンピュータ科学者のジョスリンは、ゲノミクスの博士号を持つ生物学者として、同公園の岩壁のコウモリを保護するBig Wall Bat Programを運営し、陸生野生生物の研究データの収集も監督していた。「世界中の科学者が岩壁のコウモリを調査する際に活用できる方法を開発中でした」とジョスリンは話す。
ジョスリンによると解雇通知には、勤務時間外に起きた出来事において「許容できる行動を示さなかった」と書かれていた。2025年5月、ジョスリンはヨセミテのエルキャピタンで、トランスジェンダーのプライドフラッグの掲揚に協力した。ジョスリンたちは2時間後、岩を傷つけることなくフラッグを撤去した。しかしその翌日、ヨセミテの臨時管理者は、公園内広域でフラッグ、バナー、大型標識の使用を禁止し、違反者には罰金または最長6カ月の禁固刑、あるいはその両方を科すとした。
「彼ら(ヨセミテの管理者)は、たとえ自由な時間であっても沈黙していなければ解雇すると警告しています。今や誰も安心してはいません」とジョスリンは話す。自身もノンバイナリーであり、フラッグの掲揚はトランスジェンダーやノンバイナリーのアイデンティティを称えるために行ったもので、憲法修正第1条が保障する一般市民の合法的な権利行使であると説明している。
「現政権がやろうとしているのは、最後の政治的中立地帯とされるものの切り崩しであり、国立公園もその1つなのです。ユニフォームを着ている時、私たちにはどんな支持政党もありません」
ジョスリンはすぐにでも復職したいと願っており、ヨセミテ・パークレンジャーの労働組合結成が着々と進んでいるという最近のニュースに励まされている。これについては、ジョスリンも解雇通知を受け取る8日前に賛成票を投じたばかりだ。現在ジョスリンと仲間たちは、混乱と不安の中にあっても仕事に集中するよう、元同僚らを励ましている。
「公園内で研究を続けること、公園の手入れを続けること——それも抵抗の形です」
編集者記: トンガス国有林、チャンネルアイランド国立公園、セコイア・キングスキャニオン国立公園は、数千年にわたってこれらの土地や水を管理してきた多種多様な先住民たちの先祖伝来の土地だ。この数年、多くの先住民族が連邦政府との共同管理合意書の締結に成功した。しかし、こうした重要な取り組みも、連邦政府の人員削減や一時解雇によって脆弱化している。